生成AIとマイナ保険証 ― 日本社会のデジタル利用の現在地

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デジタル化は日本社会の重要な政策テーマの一つです。
行政手続きのオンライン化、AIの活用、医療分野のデジタル化など、さまざまな分野で変化が進んでいます。

日本経済新聞の世論調査によると、生成AIの利用経験は33%となり、2年前と比べて大きく増えました。また、マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」の利用経験は65%に達しています。

本稿では、この二つの数字を手がかりに、日本社会のデジタル化がどこまで進んでいるのかを整理します。


生成AI利用率33%という数字の意味

調査によると、生成AIサービスであるChatGPTを「頻繁に利用している」または「利用したことがある」と回答した人は33%でした。
前回調査の20%から大きく増加しています。

生成AIの普及は、2023年のChatGPT公開以降、急速に進みました。特に次のような用途で利用が広がっています。

・文章作成
・情報整理
・プログラム作成
・翻訳
・調査補助

このような用途は、これまで人間が時間をかけて行っていた作業です。生成AIはそれを短時間で行えるため、ビジネスや教育の現場でも活用が広がっています。

ただし、利用率33%という数字は、裏を返すとまだ3人に2人は利用経験がないという意味でもあります。
日本では新しいITサービスの普及が比較的ゆっくり進む傾向があり、生成AIも同様の経路をたどっていると考えられます。


生成AIサービス間の利用格差

調査では、他の生成AIサービスの利用経験も示されています。

・Gemini 13%
・Copilot 10%

これらと比べると、ChatGPTの利用率は大きく先行しています。

理由として考えられるのは、次のような点です。

第一に、先行者効果です。
ChatGPTは生成AIブームの象徴的存在となり、最も広く知られるサービスになりました。

第二に、使いやすさです。
自然言語で質問するだけで回答が得られる仕組みは、多くの人にとって直感的に利用しやすいものです。

第三に、企業や教育機関での導入です。
企業の業務効率化や学校教育の現場でも導入が進み、利用経験が広がっています。

こうした要因により、生成AIの中でもChatGPTが事実上の標準的サービスとして位置づけられつつあります。


マイナ保険証利用率65%のインパクト

もう一つ注目される数字が、マイナ保険証の利用経験です。
調査では65%が利用経験ありと回答しました。

前回調査は45%でしたから、20ポイントの大幅上昇です。

背景には、2025年12月の制度変更があります。
この時点で、従来の紙やプラスチックの健康保険証は有効期限を迎え、マイナ保険証への移行が進みました。

その結果、医療機関では次のような仕組みが広がりました。

・顔認証による受付
・資格確認のオンライン化
・保険情報のデジタル連携

行政のデジタル政策としては、マイナ保険証は比較的成功した例といえるかもしれません。


行政デジタル化の難しさ

もっとも、マイナ保険証の普及は必ずしも順調だったわけではありません。

制度開始当初は、次のような問題が指摘されました。

・システム不具合
・医療機関側の設備負担
・情報登録ミス
・個人情報への不安

こうした問題により、導入に慎重な声も多くありました。

それでも普及率が65%まで上昇した背景には、制度変更により実質的に利用が必要になったことが大きいと考えられます。

つまり、民間サービスである生成AIと、行政制度であるマイナ保険証では普及のメカニズムが異なるということです。


デジタル化の二つのタイプ

今回の調査結果を見ると、日本のデジタル化には二つのタイプがあることがわかります。

一つは、生成AIのような市場主導型のデジタル化です。
企業がサービスを提供し、利用者が自発的に使い始めることで普及します。

もう一つは、マイナ保険証のような制度主導型のデジタル化です。
行政制度の変更によって普及が進みます。

この二つは普及のスピードも性質も大きく異なります。

生成AIは利用価値が認識されるほど広がりますが、制度型のデジタル化は制度設計や運用の信頼性が重要になります。


結論

日本社会のデジタル化は、確実に進んでいます。

生成AIの利用経験は33%に増え、行政のデジタル化の象徴であるマイナ保険証も65%まで普及しました。

ただし、普及の仕組みは大きく異なります。

生成AIは市場のイノベーションによって広がり、マイナ保険証は制度変更によって普及しました。
この違いは、日本のデジタル政策を考えるうえで重要な視点です。

今後、日本社会のデジタル化がどこまで進むのかは、技術の進歩だけでなく、制度設計や社会の受け入れ方にも大きく左右されることになるでしょう。


参考

日本経済新聞 2026年3月12日朝刊
各種サービスの利用経験に関する世論調査記事

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