生前整理と家財の処分 ― 相続前にやっておきたいこと──“残すもの”と“手放すもの”を、自分で選ぶ

税理士
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■ 1.「生前整理」とは、“終活”の第一歩

「生前整理」というと、「もう終わりを考えるのは早い」と思われがちです。
でも本来は――

💬 “これからの人生を心地よく生きるための整理”です。

家の中のモノ、預金や保険、不動産などの財産、
そして人間関係や想いを整理すること。

自分の意思で準備をしておくことで、

  • 相続人の手間を減らす
  • 不要なトラブルを防ぐ
  • 何より、自分自身がすっきり前向きに暮らせる
    という大きな効果があります。

■ 2.なぜ“相続前”の整理が大切なの?

相続の現場では、亡くなった後に
「家の中が片づかず、何がどこにあるかわからない」
という相談が非常に多いのです。

特に――

  • 通帳や保険証券が見つからない
  • 貴金属・株式の保管場所が不明
  • 不動産の権利書がどこにあるか誰も知らない

といった理由で、遺産分割や手続きが半年〜1年遅れることも珍しくありません。

💬 生前整理とは、「家族に迷惑をかけない準備」であり、「自分の心の整理」でもあります。


■ 3.何から始めればいい?「3つの整理ステップ」

🧾 ステップ①:モノの整理(家の中の財産)

  • 必要なもの・思い出の品・不要なものを3分類
  • 処分するものはリサイクル・寄付・不用品回収などで対応
  • 高額品(絵画・骨董品など)は写真を撮ってリスト化

💡 ポイント:子ども世代に「何を残してほしいか」聞いておくと、無駄が減ります。


💰 ステップ②:お金の整理(預金・保険・年金など)

  • 銀行口座・証券口座・保険契約を一覧化
  • 不要な口座や古い保険は整理・解約を検討
  • 預金・保険は「どこに・どのくらい・誰に渡すか」をメモ

💬 口座の数を減らすだけでも、相続手続きの負担が大幅に軽くなります。


🏡 ステップ③:不動産の整理(登記・管理)

  • 登記簿の名義が古いままになっていないか確認
  • 空き家・農地などは維持費と管理コストを把握
  • 売却・賃貸・贈与など、今後の方針を家族と共有

💡 相続登記義務化(2024年4月施行)により、名義の整理は“待ったなし”です。


■ 4.「家財の処分」は“モノの相続”を防ぐために

実は、遺産分割のトラブルで多いのが「モノ」に関するもの。

  • 父の形見の腕時計
  • 母の宝石
  • 実家の仏壇やアルバム

お金の話より感情が絡む分、争いになりやすいのです。

💬 生前に「誰に何を渡すか」「処分していいか」を明確にしておくと、家族の心が軽くなります。


■ 5.「エンディングノート」で気持ちも整理

生前整理を進めるうえでおすすめなのが、エンディングノート

内容は自由ですが、主に次のような項目をまとめます👇

分野書くことの例
財産預金・保険・不動産・株式の一覧
医療・介護延命治療・葬儀の希望・介護施設への想い
家族・友人連絡先・お世話になった人
想い感謝の言葉・家族へのメッセージ

💡 書式は市販のノートや自治体の無料冊子でもOK。
大切なのは、「誰かが開けばすぐに分かる」こと。


■ 6.専門家に相談するタイミング

生前整理は“自分だけでできること”と“専門家に任せたほうがいいこと”があります。

内容相談先
不動産の売却・名義変更司法書士・不動産会社
相続税・贈与の整理税理士・FP
遺言書作成弁護士・公証人
遺品整理・不用品処分専門業者・自治体サービス

💬 「生前整理」は1人ではなく“チームで進める”時代。
早めに相談すれば、コストもトラブルも最小限にできます。


■ 7.生前整理の“タイミング”はいつ?

多くの人が「まだ早い」と思っている間に、
病気や認知症などで自分で判断できなくなることがあります。

💬 「まだ元気なうち」が、いちばん良いタイミング。

60代から少しずつ始めて、
70代で一通り整理を終えるのが理想的です。


■ 8.まとめ:生前整理は“未来の贈り物”

観点内容
目的相続・終活の負担を軽くし、自分らしく生きる
始め方モノ→お金→不動産の順で整理
注意点処分・譲渡の意思を家族と共有する
成果家族が迷わず手続きでき、思い出を大切に守れる

💬 生前整理とは、“モノを減らす”ことではなく、“想いを残す”こと。


🌸 さいごに

相続の準備は、亡くなった後の話ではありません。

いまを安心して生きるための“ライフプランの最終章”です。

今日から少しずつ、
「何を残し、何を手放すか」を見つめ直してみませんか?
それが、家族にとっていちばんの“思いやり”になります。


参考資料

  • 国税庁「相続税・贈与税の基礎知識」
  • 総務省統計局「高齢者の生活実態調査」
  • 東京税理士会「令和7年度第5回会員研修会資料」塩野入文雄講師(2025年5月8日)
  • 日本FP協会テキスト「ライフプランと法制度」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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