物流の停滞が、経済全体の足かせになる――。
いわゆる「2024年問題」を背景に、トラックドライバーの拘束時間規制が強化されました。長距離輸送の在り方を見直さなければ、モノが運べなくなるという危機感は、もはや業界内部の話ではありません。
こうした中、国土交通省はトラック同士が荷物を積み替える「中継拠点」の整備を税制面から後押しする方針を打ち出しました。本稿では、その制度の概要と政策的な意味を整理します。
中継拠点とは何か
今回の制度では、長距離輸送の途中地点に物流施設を設け、ドライバーを交代したり、荷台のみを交換したりする仕組みを想定しています。
例えば、福岡から兵庫までの往復輸送では、従来は16時間以上の拘束時間が必要でした。
しかし広島に中継拠点を設け、区間を分割すれば、それぞれの拘束時間は約8.5~9時間程度に短縮できると試算されています。
これは単なる施設整備ではなく、輸送モデルそのものの転換です。
税制優遇の内容
制度の柱は、「貨物自動車中継輸送実施計画」の認定制度です。
倉庫業者やデベロッパーが整備する中継拠点について、国土交通大臣が計画を認定します。認定を受けた施設には以下の優遇措置が設けられます。
- 固定資産税・都市計画税の課税標準を5年間半減
- 設計費や初年度活用経費への支援
税制上の軽減措置を通じて、民間投資を呼び込む設計となっています。
働き方改革との関係
2024年からトラック運転手の1日あたり拘束時間は最大15時間以内となりました。
しかし実態として、大型ドライバーの年間労働時間は約2,484時間と、全産業平均を大きく上回っています。
中継拠点の整備は、
- 拘束時間の短縮
- 日帰り運行の実現
- 空車回送の削減
といった効果が期待されます。
単なる「施設政策」ではなく、「労働政策」でもある点が重要です。
すでに進む民間の動き
静岡県では、関東と関西を結ぶハブとして中継拠点の整備が進んでいます。
- 中日本高速道路 は遠州トラックと共同で拠点を開設
- 三菱商事都市開発 は掛川市に大型倉庫を建設
- 三菱地所 も京都府城陽市で物流施設を整備
いずれも高速道路インターチェンジ近接型で、8時間圏内輸送を前提とした立地戦略です。
国は2030年度までに20カ所の認定を目指しています。
将来の自動運転との接点
この政策のもう一つの意味は、自動運転トラックのインフラ整備です。
高速道路区間を自動運転が担い、拠点で一般車両に積み替える。
こうした分業モデルが想定されています。
拠点は単なる「働き方対策」ではなく、将来の物流構造を前提にした基盤整備でもあるのです。
税制政策としての評価
固定資産税・都市計画税の軽減は、地方自治体にとっては減収要因となります。
そのため、
- 公共性の確保(時間貸し保管スペースの設置)
- 自治体との協定締結
といった条件が付されています。
税優遇を通じて「公共インフラ」を民間に担わせる仕組みといえるでしょう。
結論
物流の中継拠点整備は、
- ドライバーの拘束時間短縮
- 輸送効率の向上
- 自動運転時代への備え
という三つの政策目的を持っています。
税制優遇は、その実現のためのインセンティブ設計です。
人手不足と労働規制が進む中、物流の再設計は避けられません。
今回の制度は、単なる「倉庫政策」ではなく、日本の物流モデルそのものを転換する一歩といえるでしょう。
参考
日本経済新聞
「荷物の中継拠点、税優遇 運転手の拘束時間を短縮」
2026年2月18日 朝刊

