ここ数年、私たちの暮らしを直撃しているのが物価高です。
給与が上がっても、食費や光熱費、家賃の上昇で「手取り感」が増えない――そんな声が多く聞かれます。
実際、実質賃金(物価を考慮した給与の実質的な価値)はマイナスが続いており、「働いても豊かになった気がしない」というのが今の日本の現実です。
そんな中で注目されているのが、福利厚生を“第3の賃上げ”と捉える動きです。
定期昇給やベースアップのように給料を増やすだけでなく、非課税で生活コストを下げる工夫をする。
企業も社員も、双方が得をする仕組みです。
社食・弁当・お米支給まで!
「食」で支える新しい福利厚生
たとえば、クラウド関連事業のテラスカイでは、社員が500円で食べられる社食を導入しています。
外食だと1,200円以上が当たり前のエリアで、会社が1食600円を負担。
火気を使わない「キッチンレス社食」なので導入コストも安く、オフィス環境を問わずに広がっています。
また、人材サービス会社のアプティでは、500円の弁当を100円で提供。
平均年齢が20代後半と若い社員が多く、「食費の負担を減らせるから助かる」という声が続出しているそうです。
さらに、奨学金返済の代理制度まで整備。
「福利厚生が入社の決め手になった」と答える社員は8割にものぼります。
そしてユニークなのが、“お米”を支給する企業。
千葉県のベンチャー企業ニューイッツが手がける「田んぼオーナー制度」では、契約した企業に収穫したコメをそのまま配布します。
1区画25万円で240キロのコメが収穫でき、社員1人に10キロずつ配る企業もあるとのこと。
まさに“生活を直接支える福利厚生”です。
税務面でもメリット大
経費計上できる「実質的な賃上げ」
企業にとって福利厚生費は、経費として損金算入が可能。
つまり、法人税の節税効果も得られるわけです。
一方で社員にとっては、一定の要件を満たせば非課税。
給与のように所得税や社会保険料が差し引かれないため、手取りベースで見れば「給料アップ以上の効果」があります。
たとえば、
- 会社負担の食事補助(1食あたり3,500円以下)
- 通勤費の実費支給
- 慶弔見舞金
- 福利厚生施設の利用料補助
などは、条件を満たせば非課税で受け取れるのです。
この“税の仕組み”を上手に使うことで、企業は人件費を抑えつつ社員満足度を上げることができます。
採用・定着にも効く“福利厚生経営”
ベネフィット・ワンの調査によると、**20代の約7割が「賃上げが難しいなら福利厚生を充実してほしい」**と回答しています。
物価上昇の中で、可処分所得を増やすことが若い世代の関心になっているのです。
企業にとっても、採用難の時代において「福利厚生の充実」は強力な武器になります。
単なる“サービス”ではなく、経営戦略としての福利厚生。
これからの時代は、「社員の生活を支える会社」こそが選ばれるのかもしれません。
まとめ:
「手取りを増やす」発想で、働き方に希望を
賃上げには限界がありますが、福利厚生を工夫すれば実質的な手取りを増やすことができます。
しかも、税制面での優遇もあり、企業にとってもメリットは大きい。
つまり、福利厚生は――
「社員が喜び、企業も得をする、最も持続可能な賃上げ策」
なのです。
物価高の時代だからこそ、“給料以外で豊かさを感じる仕組み”が求められています。
あなたの働く会社でも、あるいはあなた自身のビジネスでも、そんな「第3の賃上げ」を考えてみてはいかがでしょうか。
(出典:2025年10月9日 日本経済新聞「福利厚生で『手取り』充実 首都圏『第3の賃上げ』広がる」)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

