無人ダンプが生み出す「社会価値3600億円」 ― 私たちの生活ともつながるインパクト加重会計

会計
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「企業の価値」と聞くと、多くの人は「売上」や「利益」を思い浮かべるでしょう。
しかし、実際に企業活動が社会に与える影響は、それだけでは測れません。たとえば――

  • 環境への負荷をどれだけ減らしているか
  • 働く人の安全や労働環境をどれだけ改善しているか
  • 社会全体にどんなプラスの価値をもたらしているか

こうした「目に見えにくい価値」をお金に換算するのが、いま注目されている インパクト加重会計 です。

2025年、建設機械大手のコマツがこの手法を使い、自社の無人ダンプトラック運行システム(AHS)の社会的価値を 3600億円 と算出・公表しました。これは企業の「社会貢献」を単なるスローガンではなく、数字で示す大きな挑戦です。


コマツの無人ダンプが生んだ3600億円の価値

コマツが金額換算したのは、鉱山現場で使われる AHS(無人ダンプトラック運行システム) です。

どんな価値?

  • 労働力の不足を補う
    世界の鉱山は人手不足が深刻です。AHSが導入されることで、人が担っていた仕事を代替できる=「労働価値」として金額に換算されました。
  • 事故リスクを減らす
    無人化により現場での事故が減れば、失われる労働や補償費も抑えられます。
  • マイナス面も計算
    一方で、稼働や廃棄時に出るCO2排出は「マイナスの社会コスト」として約750億円を計上。ただし通常のダンプより排出は少なく、差し引きではプラスの効果が大きいとされます。

結果、純粋に社会に生み出された価値は 3600億円。コマツの営業利益6571億円に加えれば、企業価値は1兆円を超える規模になります。


読者の生活とどうつながる?

「鉱山の無人ダンプ」と聞くと、生活と遠い話のように感じるかもしれません。
でも、この取り組みは私たちの日常や将来の働き方と大きく関係しています。

① 自動運転技術への広がり

無人ダンプは、広大な鉱山という“閉じられた環境”で活躍しています。
ここで培われた安全技術やAI制御は、将来的に 一般道路での自動運転車 へ応用される可能性があります。

たとえば、

  • 長距離トラックのドライバー不足を補う
  • 夜間の物流を効率化する
  • 高齢者の移動手段を支える

こうした場面で役立つかもしれません。私たちが「自動運転タクシー」を利用する日も、こうした鉱山の実証が土台になっているのです。

② 働き方改革との接点

AHSは「人が危険な現場に立たなくてもよい」仕組みをつくります。
これは、単に効率化というより 「人を守り、より安全な仕事を提供する」 という意味を持っています。

私たちの生活でも、AIや自動化が導入されると、単純作業や危険作業から解放され、

  • より付加価値の高い業務に集中できる
  • 働き方に柔軟性が生まれる

といった形で恩恵を受けるかもしれません。まさに「働き方改革」の延長線上にある取り組みです。

③ 消費者としての安心感

環境負荷や社会へのインパクトを企業が数値で開示すれば、消費者も 「この企業の商品を選ぶ理由」 を持ちやすくなります。
たとえば、自動車や住宅を買うときに「CO2削減効果を数値化した製品」の方が信頼できる、と考える人は増えていくでしょう。


インパクト加重会計がもたらす未来

コマツの事例は、単なるPRではなく「企業の新しい評価軸」を提示しています。

  • 投資家は 利益だけでなく、社会的価値を加味して投資判断をする
  • 従業員は 自分の会社が社会にどう貢献しているかを誇りにできる
  • 消費者は 環境や社会に配慮した企業を選ぶ

そして、数字で示されることで「見えない価値」が共通言語となり、より良い経済活動につながるのです。


まとめ

  • コマツは無人ダンプ運行システムの社会的価値を 3600億円 と算出。
  • 人手不足解消や事故削減といったプラス効果、CO2排出のマイナス効果を合わせて評価した。
  • 自動運転技術や働き方改革、消費者の選択行動など、私たちの生活ともつながるテーマである。
  • インパクト加重会計は「利益」だけでなく「社会のためになる価値」を測る新しい物差し。

いまや「企業がどれだけ稼ぐか」だけでなく、「社会にどれだけ貢献するか」が問われる時代です。
コマツの試みは、その未来を映し出す鏡なのかもしれません。


📌 参考
無人ダンプ運行、社会価値3600億円 コマツがインパクト加重会計:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91642080Q5A930C2DTB000/


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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