混同されやすい「消耗品」と「備品」——経理で迷わない判断基準と節税のコツ

会計
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経理をしていると、意外と悩むのが「これは消耗品? それとも備品?」という判断。
購入金額が10万円前後だったり、パソコンやオフィス家具など耐用年数が長いものになると、仕訳をどう切るか迷う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、『企業実務』(2025年6月号)の特集を参考に、消耗品と備品の違い・会計処理・節税のヒントをやさしく整理します。


1️⃣ 「消耗品」と「備品」の基本的な違い

項目消耗品備品
使用期間原則1年未満原則1年以上
取得価額10万円未満が原則10万円以上が原則
使用形態一度・短期使用繰り返し継続使用
会計処理購入時に費用化(消耗品費)固定資産として計上し減価償却
税務取扱い損金算入可減価償却で費用化

📘 ポイント
9万円のデスクでも長期間使うなら「備品」に、反対に短期利用の機器なら「消耗品」に。
金額だけでなく、使用目的と期間で判断することが大切です。


2️⃣ 消耗品の会計処理の基本

(1)購入時に即費用化する方法

最も一般的なのがこの方法。
例:ボールペンを5,000円購入した場合

借方:消耗品費 5,000円
貸方:現金 5,000円

発生ベースで費用化でき、処理がシンプルです。
日常的な備品購入が多い中小企業では、この方式が最も実務的です。

(2)一時的に資産計上して使用時に費用化

在庫管理を厳密に行う企業で採用されます。
清掃用品などをまとめ買いした場合に便利ですが、在庫管理コストがかかります。

購入時 借:消耗品(資産)/貸:現金
使用時 借:消耗品費/貸:消耗品(資産)

3️⃣ 備品の会計処理と減価償却

備品は「固定資産」として資産計上し、耐用年数に応じて減価償却します。

主な耐用年数の目安

  • パソコン:4年
  • オフィス家具(金属製):15年(一般的な木製なら8年)
  • コピー機:5年

償却方法は「定率法」が原則(法人の場合、届出をしなければ自動的に定率法になります)。

取得価額の考え方

本体価格だけでなく、配送料・設置費・工事費など付随費用も含める必要があります。
例:PC本体12万円+設置費2万円 → 取得価額14万円


4️⃣ 節税に効く!中小企業の特例制度

✅(1)少額減価償却資産の特例(中小企業限定)

  • 取得価額30万円未満の資産が対象
  • 年間合計300万円まで即時償却OK
  • 税務署への申請不要(青色申告が前提)
  • 固定資産税(償却資産税)は課税対象

💡青色申告の中小企業であれば、この制度を使うと購入年度に全額経費化が可能になります。

✅(2)一括償却資産制度(全企業対象)

  • 10万円以上20万円未満の資産を3年間で均等償却
  • 固定資産税は非課税
  • 中小企業・大企業とも利用可能

節税だけでなく、経理処理の簡素化・キャッシュフロー調整にも効果があります。


5️⃣ よくある混同ケースと判断のコツ

🖥️ ケース1:10万円前後のパソコン

  • 税込10万円未満 → 消耗品費で処理可
  • 税込10万円以上 → 固定資産として減価償却
    ただし、中小企業なら「少額減価償却資産」として即時償却も可。

💺 ケース2:オフィスチェアのまとめ買い

1脚1.2万円 × 10脚=12万円でも、単価が10万円未満なら消耗品扱いでOK。
ただし応接セットなど「1組」で販売されるものはセット単位で判定します。


6️⃣ 消費税経理方式による違いにも注意!

経理方式判定基準メリット
税抜経理方式税抜金額で判定節税上有利。固定資産税の課税回避もしやすい
税込経理方式税込金額で判定処理が簡単。小規模事業者向け

免税事業者は税込方式しか選べないため注意。
処理を簡単にしたいか、税務上の有利さを取るかで選択を。


7️⃣ 備品購入時の判断フローチャート(実務用)

備品を購入した
 ↓
取得価額はいくら?
 ├─10万円未満 → 消耗品費として即時費用化
 ├─10~20万円未満 → 一括償却資産(3年均等)
 ├─20~30万円未満 → 少額減価償却資産の特例(300万円まで即時償却)
 └─30万円以上 → 通常の減価償却(定率法・定額法)

💡節税を優先するなら「即時償却」、固定資産税の節税を重視するなら「一括償却」を選ぶと良いでしょう。


📝まとめ

  • 金額だけでなく「使用期間・用途」で判断する
  • 中小企業は少額資産特例を最大限活用する
  • 消費税の経理方式によって節税効果が変わる

日常的な経理処理こそ、制度を正しく理解しておくと節税にもつながります。
次の決算に向けて、自社の備品管理ルールを見直してみましょう。


📖参考:
『企業実務』2025年6月号「混同されやすい消耗品と備品の会計処理をおさらいしよう」著:中村太郎税理士(中村太郎税理士事務所)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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