消費税・確定申告 実務シリーズ 第2回 課税・免税・簡易課税の判断と落とし穴

税理士
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消費税の確定申告で最初に立ちはだかるのが、「自分はそもそも申告が必要なのか」「どの計算方法を選ぶのか」という判断です。
課税事業者なのか、免税事業者なのか。さらに、課税事業者であれば原則課税なのか簡易課税なのか。この選択によって、申告書の内容だけでなく、納税額そのものが大きく変わることもあります。

一方で、この判断を「売上が1,000万円を超えたかどうか」だけで済ませてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
第2回では、課税・免税・簡易課税の基本的な判断軸と、実務上よくある誤解や注意点を整理します。


課税事業者と免税事業者の基本ルール

消費税の申告が必要かどうかは、原則として基準期間の課税売上高によって判断されます。

個人事業主の場合、基準期間とは2年前を指します。
たとえば、2025年分の消費税については、2023年の課税売上高が判定基準になります。

  • 基準期間の課税売上高が1,000万円以下 → 原則として免税事業者
  • 基準期間の課税売上高が1,000万円超 → 課税事業者

ここで重要なのは、「売上高」ではなく課税売上高で判定する点です。
非課税取引や不課税取引は、この1,000万円の判定には含まれません。


「今年1,000万円を超えたらすぐ課税」ではない

よくある誤解として、「今年の売上が1,000万円を超えたら、今年から消費税を払う必要がある」というものがあります。

実際には、原則として2年前の売上を基準に判定します。
そのため、今年の売上が急に伸びたとしても、すぐに課税事業者になるとは限りません。

ただし、例外もあります。

  • 特定期間(前年の前半6か月)の課税売上高や給与支払額が一定基準を超えた場合
  • 課税事業者選択届出書を提出した場合

これらに該当すると、基準期間に関係なく課税事業者となることがあります。
「原則」と「例外」を混同すると、申告漏れや過少申告につながりやすくなります。


インボイス制度と課税事業者選択の関係

インボイス制度の開始により、免税事業者であっても自ら課税事業者を選択するケースが増えました。

課税事業者を選択すると、基準期間の売上に関係なく、その年から消費税の申告と納税が必要になります。
一度選択すると、原則として2年間は免税に戻れない点も重要です。

取引先との関係を優先して安易に課税事業者を選択した結果、

  • 想定以上の納税負担が生じる
  • 事務負担が急に増える

といった事態になることもあります。
課税事業者になるかどうかは、売上規模や取引内容を踏まえて慎重に判断する必要があります。


原則課税と簡易課税の違い

課税事業者になった場合、次に考えるのが計算方法の選択です。
消費税の計算方法には、大きく分けて次の2つがあります。

  • 原則課税
  • 簡易課税

原則課税は、売上にかかる消費税から、仕入や経費にかかる消費税を差し引いて計算する方法です。
帳簿や請求書、インボイスの内容をもとに、実際の取引を一つひとつ反映させます。

一方、簡易課税は、売上にかかる消費税にみなし仕入率を掛けて計算する方法です。
実際の仕入税額を細かく計算する必要がなく、事務負担を軽減できる点が特徴です。


簡易課税が使える人・使えない人

簡易課税は、すべての課税事業者が選択できるわけではありません。
原則として、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることが条件です。

また、簡易課税を選択するためには、事前に簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。
この届出は、原則として適用を受けたい年の前日までに提出しなければなりません。

申告の直前になってから「簡易課税にした方が有利だった」と気づいても、後から切り替えることはできません。


簡易課税の「楽そう」という落とし穴

簡易課税は事務負担が軽い反面、必ずしも納税額が少なくなるとは限りません。

たとえば、

  • 実際の仕入や経費が多い事業
  • 設備投資を行った年

などでは、原則課税の方が有利になることがあります。

「簡易」という言葉から、安易に簡易課税を選択してしまうと、
結果として本来より多くの消費税を納めることになる場合もあります。


課税方式の選択は事業内容で変わる

原則課税と簡易課税のどちらが適しているかは、

  • 業種
  • 取引形態
  • 売上と経費の構造

によって異なります。

一度選択した課税方式は、原則として一定期間継続することになります。
そのため、「今年だけ」ではなく、数年単位での影響を見据えて判断することが重要です。


結論

消費税の確定申告では、最初の段階で行う「課税・免税・課税方式」の判断が、その後の実務と税額に大きく影響します。
基準期間の考え方や、届出の期限を正しく理解していないと、取り返しのつかない選択になってしまうこともあります。

次回は、インボイス制度下での売上・仕入の整理方法を取り上げ、帳簿や請求書をどう見ればよいのかを実務目線で整理します。


参考

  • 国税庁「免税事業者と課税事業者」
  • 国税庁「簡易課税制度の概要」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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