人口減少が現実のものとなる中で、自治体財政の基盤である「税収」はどのように変化するのでしょうか。
東京一極集中のもとでは、人口と企業が集まる東京都が豊富な税収を確保し、それが地方へ再分配される構造が成り立ってきました。しかし、東京自身が人口減少に転じる局面では、この前提が揺らぎます。
本稿では、自治体税収の中核である「住民税」と「固定資産税」に焦点を当て、人口減少社会における構造変化と、その意味を整理します。
自治体税収の柱は何か
市区町村や都道府県の税収は、多様な税目で構成されていますが、実務的に見ると柱は限られています。
代表的なのが
- 個人住民税
- 固定資産税
です。
これらは景気変動の影響を受けつつも、比較的安定的な税収源として位置づけられてきました。
東京が強かった理由も、この二つの税目を同時に厚く確保できていた点にあります。
住民税は「人」と「所得」に依存する
住民税は、人口と所得水準の双方に左右されます。
東京は若年層や働き盛り世代の流入が続き、平均所得も高いため、1人当たりの住民税収が全国でも突出してきました。
しかし人口減少局面では、次のような変化が想定されます。
- 生産年齢人口の減少
- 高齢化による課税所得の低下
- 非正規雇用や単身世帯の増加
人口が減るだけでなく、「課税できる所得」が同時に細っていく点が重要です。
特に高齢化が進むと、年金所得中心の世帯が増え、住民税収は想像以上に減少しやすくなります。
これまで「人口さえ維持できれば税収は安定する」と考えられてきた自治体ほど、この変化は重くのしかかります。
固定資産税は「地価」と「利用」に依存する
固定資産税は、土地・建物といった不動産を課税対象とする税目です。
人口流入が続く地域では地価が上昇し、評価替えを通じて税収も増えやすくなります。
一方、人口減少が進むと、次の問題が顕在化します。
- 地価の下落による評価額の低下
- 空き家・空き地の増加
- 老朽化による建物評価額の減少
特に注意すべきは、空き家が増えても固定資産税が「自動的に安定するわけではない」という点です。
管理不全空き家への対応や、利用実態に応じた税制措置が進めば、税収はさらに圧迫される可能性があります。
都市部であっても、タワーマンションの高齢化や相続による空室増加が進めば、将来的な修繕・管理の停滞が地価や評価額に影響を及ぼすことになります。
東京の税収構造が揺らぐと何が起きるか
東京はこれまで、住民税と固定資産税の双方が強いという、他地域にはない税収構造を持っていました。
しかし人口減少が進めば、
- 住民税:課税人口と所得の減少
- 固定資産税:地価と利用価値の低下
という二重の圧力がかかります。
その結果、これまで可能だった
- 子育て支援の充実
- 利用料の低い公共サービス
- 独自施策の展開
が難しくなります。
行政サービスは「削るか、負担を求めるか」という選択を迫られることになります。
これは東京だけの問題ではなく、東京の税収を前提に組み立てられてきた地方財政にも波及します。
地方にとっての住民税・固定資産税の限界
地方自治体では、すでに住民税と固定資産税の伸び悩みが顕在化しています。
人口減少と高齢化が同時に進む地域では、両税目ともに中長期的な増加は見込みにくいのが現実です。
このため、地方では次のような課題が浮かび上がります。
- 税収が増えても交付税が減る仕組み
- 自主財源を増やすインセンティブの弱さ
- 短期的な財源確保策への依存
住民税・固定資産税だけに依存した財政運営は、すでに限界に近づいていると言えます。
結論
人口減少社会では、住民税と固定資産税は「安定財源」ではなくなります。
東京でさえ例外ではなく、税収構造の変化は避けられません。
重要なのは、
- 人口が減ること自体より
- 税収の前提が変わること
を正しく理解することです。
自治体は、サービス水準と負担の関係を住民と共有し、税に頼り切らない財政運営を模索する必要があります。
同時に、住民側も「行政サービスは永続するものではない」という現実と向き合う局面に入っています。
東京一強の終焉は、税と行政のあり方を問い直す出発点でもあるのです。
参考
- 日本経済新聞「終わる東京一強 人口減に転換」
- 日本経済新聞「地方も『自給』試される」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
