有事の資産運用――株・金・ドルはどのように動くのか

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国際情勢が不安定になると、金融市場では資金の移動が急激に起きます。戦争や軍事衝突などのニュースが流れると、株式市場が下落する一方で、安全資産とされる金融商品が買われることが一般的です。

2026年3月の中東情勢でも、米国・イスラエルとイランの衝突を背景に、世界の金融市場は大きく揺れました。原油価格が急騰し、株式市場は下落しました。一方でドルや現金への資金移動が目立ちました。

こうした市場の動きは突発的に見えるものの、実際には歴史的に繰り返されてきた一定のパターンがあります。本稿では、有事の際に株式・金・ドルといった主要資産がどのように動くのかを整理します。


有事の際に起きる資金移動

戦争や紛争が発生すると、投資家はリスクの高い資産を売却し、安全性の高い資産へ資金を移す傾向があります。この現象は一般に「リスクオフ」と呼ばれています。

株式は企業の利益や経済活動に大きく依存する資産であるため、地政学リスクが高まる局面では売られやすくなります。企業活動の停滞やエネルギー価格の上昇によるコスト増が懸念されるためです。

一方で、安全資産とされる資産には資金が流入します。代表的なものが次の三つです。

・米ドル
・米国債
・金(ゴールド)

ただし、これらの資産が常に同じ動きをするわけではありません。市場環境によって、資金の流れは微妙に変化します。


株式市場の典型的な動き

有事の発生直後には、株式市場は大きく下落することが一般的です。これは不確実性の高まりによって投資家がリスク資産を避けるためです。

特に影響を受けやすいのは次のような業種です。

・航空・観光
・輸送
・消費関連
・ハイテク企業

これらの分野は景気の影響を受けやすく、戦争やエネルギー価格の上昇による影響を受けやすいためです。

ただし、歴史的に見ると、地政学リスクによる株価下落は長期化しないケースも多くあります。市場は比較的早くリスクを織り込み、状況が見通せるようになると株価が回復することが少なくありません。


金が必ずしも上がるとは限らない理由

一般的に、金は「有事の資産」と呼ばれます。国家の信用に依存しない資産であるため、戦争や金融危機の際には買われやすいとされています。

しかし、実際の市場では必ずしも金が上昇するとは限りません。

紛争が発生した直後には、投資家が現金を確保するために金を売却することがあります。株式や債券の損失を補うために、流動性の高い資産が売られるケースもあるためです。

また、米ドルが強く上昇する局面では、金価格が下落することもあります。金はドル建てで取引されるため、ドル高は金価格の下押し要因となるからです。

そのため、有事の際には

・短期的には金が売られる
・その後、安全資産として買われる

といった複雑な値動きが見られることもあります。


ドルが最も買われやすい理由

近年の金融市場では、有事の際に最も強く買われる資産は米ドルであるケースが多く見られます。

その理由は、米ドルが世界の基軸通貨であり、最も流動性の高い通貨であるためです。市場が混乱する局面では、投資家はまず資金を現金化し、その多くがドルとして保有されます。

また、米国債市場は世界最大の債券市場であり、安全資産としての需要が高いこともドル買いにつながります。

このため、金融市場では「キャッシュ・イズ・キング(現金は王様)」という言葉が使われることがあります。危機の際には、流動性の高い資産が最も重視されるためです。


エネルギー価格が市場のカギを握る

現在の中東情勢では、ホルムズ海峡をめぐる緊張が市場の大きな焦点となっています。この海峡は世界の原油輸送の重要なルートであり、封鎖や輸送障害が起きればエネルギー市場に大きな影響を与えます。

エネルギー価格が急騰すると、インフレ圧力が強まり、中央銀行の金融政策にも影響します。金利が高止まりすれば企業の資金調達コストが上昇し、株式市場にとっては逆風となります。

その意味では、有事の際に株式市場の動きを決める最大の要因は、戦争そのものよりもエネルギー価格の動向だと言えるでしょう。


結論

戦争や紛争が起きると、金融市場では株式が売られ、安全資産に資金が移動する傾向があります。しかし、その資金の流れは単純ではありません。

近年の市場では、有事の際には金よりも米ドルや現金が優先される傾向が見られます。市場の不確実性が高まるほど、流動性の高い資産が重視されるためです。

また、株式市場の長期的な動きは、戦争そのものよりも、エネルギー価格やインフレ、景気といった経済の基礎条件に大きく左右されます。

有事の市場動向を理解するうえでは、地政学リスクだけでなく、それが経済にどのように波及するかを冷静に見極めることが重要です。


参考

日本経済新聞 2026年3月6日
ウォール街ラウンドアップ「有事の株売り」いつまで

日本経済新聞 2026年3月6日
有事には「現金が王様」

Morgan Stanley 地政学ショックと株式市場分析

LPL Financial 地政学イベントと市場パフォーマンス分析

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