先日の日経新聞の朝刊に「NISA、運用資産見直し」という記事が載っていました。
今回も引き続き、こちらの記事について考えてみたいと思います。
(なお、この件については全6回のシリーズで書かせていただき、今回はその第5回となります。)
金融庁が2026年度の税制改正要望で示したのは、暗号資産(仮想通貨)の課税方法を見直すという大きな動きです。
現在は「雑所得」として総合課税の対象となり、最大55%の税率がかかることもあります。
これを株式や投資信託と同じ「金融所得課税(税率 20%)」に一本化する案が検討されています。
もし実現すれば、暗号資産はより「投資商品」として扱いやすくなりそうです。
1.株・投信との共通点
暗号資産と株式・投資信託は、いくつかの共通点があります。
・値動きがある:価格は市場で決まり、常に変動する
・売却益が出る:安く買って高く売れば利益になる
・税制で優遇される方向へ:NISAや金融所得課税の対象に整理されつつある
→つまり「投資対象のひとつ」として、制度上の扱いが近づきつつあるのです。
2. 株・投信との違い
一方で、暗号資産には株や投信とは大きな違いがあります。
・裏付け資産がない
株式は会社の事業、投資信託は株や債券の集合体に基づきますが、暗号資産は需給や投資家の思惑で価格が動きます。
・値動きが極端
株や投に比べて、1日で数%~数十%動くことも珍しくありません。
→長期的に安定した成長を前提とする NISA投資とは性質が異なります。
・配当や分配金がない
株式のように配当を受けたり、投のように分配金を得たりする仕組みは基本的にありません。
→「インカム収入」ではなく「値上がり益」一本で勝負する投資です。
3.生活者にとっての意味
もし暗号資産が金融所得課税20%の対象となれば、これまでよりも投資のハードルは下がります。
しかし、以下のような注意が必要です。
・「株や投の代わり」ではなく「ハイリスク枠」として位置づける
・老後資金や生活資金には不向き、余裕資金での投資が前提
・NISA枠に入ったとしても、投のように「長期・積立・分散」で安心とは限らない
→暗号資産は「資産の一部」であり、「資産形成の主役」にはなりにくいと考えるのが現実的です。
4. まとめ
・暗号資産が金融所得課税(20%)へ移行すれば、株や投信に近い税制優遇を受けられる
・ただし、裏付け資産がなく、値動きが激しく、配当もないという点で性質は大きく異なる
・一般生活者にとっては「余裕資金で試す投資先」であり、老後資金や安定運用には不向き
NISAの進化は資産形成の可能性を広げますが、そのすべてを「安心して長期運用できる商品」と誤解してしまうのは危険です。
暗号資産はあくまで「スパイス的な存在」として考えるのが、現実的な使い方といえるでしょう。
ということで、今回は以上とさせていただきます。
次回(第6回)は「NISA 進化と金融庁の狙い」をテーマに、制度改正の背景や今後の方向性を整理していきます。
次回以降も、よろしくお願いいたします。
暗号資産と NISAー株や投信との違い
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