2026年の日本株市場について、強気な見通しが相次いでいます。日本経済新聞によると、証券会社や銀行など金融機関11社が予想した2026年末の日経平均株価は、5万3000円から6万1000円の範囲に収まりました。全社が前年末水準や過去最高値を上回ると見ており、日本株は4年連続で上昇するとの見方が市場のコンセンサスになりつつあります。
もっとも、「株価が上がる」という一文だけでは、その背景やリスクは見えてきません。本稿では、今回の予想の根拠となっている企業業績やPER(株価収益率)の考え方、AIを中心とした成長期待、そして慎重論までを整理し、今後の日本株をどう捉えるべきかを考えていきます。
企業業績が株価を押し上げる構図
今回の強気予想の最大の根拠は、企業業績の改善です。TOPIX採用企業の1株当たり利益(EPS)は増益基調が続くと見込まれており、2027年に向けた予想増益率は11~14%程度とされています。世界経済が底堅く推移していることに加え、日本国内でインフレが定着し、価格転嫁が進みやすくなったことが利益拡大を後押ししています。
株価は「利益×評価」で決まります。利益が伸びる局面では、株価が上昇しやすいのは自然な流れです。今回の予想では、この「利益の伸び」については、金融機関の間で大きな見解の違いはありません。
PERはどこまで許容されるのか
注目されるのは、株価水準を左右するもう一つの要素であるPERです。11社が想定する2026年末のPERは16倍から17倍台半ばと幅があります。
日本株のPERは、リーマン・ショック以降、コロナ禍の一時期を除けば12~16倍程度のレンジに収まってきました。足元では15倍台後半と、過去のレンジ上限に近づいています。ここからさらに株価が上昇するためには、「日本株の評価が一段引き上がる」という前提が必要になります。
強気派は、日本経済がデフレ構造から完全に脱却し、企業利益が持続的に成長する局面に入ったと見ています。その場合、PERが17倍台まで切り上がっても不自然ではない、という考え方です。
AI期待と設備投資が評価を押し上げる
PER上昇のカギとして、多くの市場関係者が挙げるのがAIです。生成AIにとどまらず、製造業や物流、医療などの現場にAIを組み込む「フィジカルAI」の活用が進めば、生産性の底上げが期待できます。
AI関連投資は一過性のテーマではなく、企業の中長期的な競争力を左右する要素になりつつあります。設備投資の活性化が続けば、企業収益の見通しが改善し、それが株価評価の引き上げにつながる、という循環が描かれています。
米国市場では、主要企業のPERが20倍を超える水準で推移しています。テクノロジー企業の成長期待が評価を押し上げている構図ですが、日本株も同様に「成長市場」として再評価される可能性がある、というのが強気派の見方です。
慎重論が示すリスク要因
一方で、慎重な見方も根強く存在します。特に懸念されているのが、財政拡張と金利上昇の影響です。政府の積極財政が続く中で、長期金利が上昇すれば、株式市場には調整圧力がかかりやすくなります。
また、海外投資家の視点では、日本の成長期待が一時的なものにとどまる可能性も指摘されています。AI投資が過剰期待となり、収益化が遅れれば、PERの上昇は正当化されません。その場合、株価は利益成長に見合った水準に引き戻されるリスクがあります。
慎重派は、2026年末のPERを16倍程度と見込み、株価の上昇余地は限定的と考えています。
個人投資家はどう向き合うべきか
日経平均が5万円台後半や6万円台に達する可能性が語られると、どうしても「今から乗り遅れない方がよいのか」と考えてしまいがちです。しかし、重要なのは水準そのものではなく、その前提条件です。
企業利益が想定どおり伸びているのか、PER上昇が成長に裏打ちされたものなのかを冷静に見極める必要があります。AIという大きなテーマがある一方で、金利や財政、海外経済といった不確実性も無視できません。
長期投資の視点では、短期的な株価水準に一喜一憂するよりも、日本企業の構造変化や収益力の持続性に注目する姿勢が求められます。
結論
2026年末の日経平均株価が5万3000円から6万円台に達するという予想は、企業業績の拡大とPER上昇を前提としたシナリオです。AIや設備投資を軸とした成長期待が実現すれば、日本株は新たな評価ステージに入る可能性があります。
一方で、金利上昇や期待先行による調整リスクも存在します。強気と慎重の両方の視点を踏まえたうえで、日本株の「成長の質」を見極めることが、これからの投資判断ではより重要になっていくといえるでしょう。
参考
・日本経済新聞「今年末の日経平均株価『5万3000~6万円台も』 11社調査」(2026年1月4日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

