2025年夏、日本株が史上最高値を更新しました。日経平均は石破首相の退陣表明をきっかけに急騰し、8月から9月にかけて高値を連日のように更新しています。
一方で、街角の実感は乏しく、「株高なのに生活は楽にならない」との声が聞こえてきます。本当に日本株は強いのか、それとも一時的なバブルなのか。今回は市場関係者や識者の声を交えて、この「熱気なき株高」の正体を整理してみます。
cisが語る「今の株高はバブルではない」
専業投資家として20年以上のキャリアを持ち、SNSでの発言が市場にも影響するcis氏。
彼は今回の株高について「いわゆるバブルだとは思っていない」と述べています。
- 背景には世界的なインフレとカネ余りがある
- かつて「1億円の資産で億り人」とされたが、今では50億円で一人前
- マネーの規模が桁違いになっている
cis氏の視点からすると、今の株価は「異常な投機」ではなく「世界的な流動性の反映」なのです。
ETF・インデックス資金が押し上げる日本株
BofA証券の山上晋一郎氏は、日本株高の背景に「インデックス運用資金の流入」を指摘します。
ETFを通じて、日経平均やTOPIXに連動する資金が機械的に入ってくる。これにより、個別企業の実力を超えて株価が上がってしまうという「違和感」が生まれています。
さらに、米国株からの資金振替を探す海外投資家も増えています。ティー・ロウ・プライスの渡辺博史氏によると、海外年金基金から「日経平均とTOPIXの違い」を尋ねられるほど、基礎から日本株を学ぶ動きも出ているとのこと。
まさに「素人マネー」も入り始めた状況です。
「買い場なし」に悩む運用のプロ
運用会社さわかみ投信は、株価下落時に備え現金比率を高める方針を新聞全面広告で宣言しました。
しかしその後も株価は上がり続け、想定していた「買い場」は訪れていません。
この動きはリーマン・ショック前夜の米国と似ているとも言われています。つまり「理屈では説明できない強さ」が市場に広がっているということです。
株価高騰と生活実感のギャップ
第一生命経済研究所の藤代宏一氏は『株高不況』という著書で次のように指摘しています。
- 企業の収益や株価はインフレで膨らむ
- しかし日本の家計は株式保有が少なく、インフレの影響を直撃
- 結果として「株高=生活の豊かさ」につながらない
このギャップが「熱気なき最高値」を象徴しています。
個人投資家の動き──NISAが後押し
一方で、最高値圏でも投資を始める個人は増えています。
埼玉県在住の渡部愛さんは「給料だけでは足りない」との切迫感から、NISAをきっかけに株式投資を始めました。
「一時的な下落は覚悟し、長期で持ち続ける」と冷静な姿勢を示しています。
バブル期のような大衆熱狂ではなく、「地に足のついた投資行動」が広がりつつあるのかもしれません。
過去のバブルとの違い
1929年のウォール街や1980年代の日本では、大衆の投機熱が最高潮に達したときにバブルが崩壊しました。
ジョセフ・ケネディが「靴磨きの少年が株を勧めたから手仕舞った」という逸話は有名です。
今の日本株は「誰もが株に夢中」という状況からはほど遠い。むしろ様々な見方を持つ投資家が混在しており、それが市場の厚みを支えています。
まとめ──長続きする可能性
- 世界的なインフレとカネ余りが株価を押し上げている
- ETFなどインデックス資金の存在感が拡大している
- 生活実感は伴わず、ギャップが広がっている
- ただし大衆の熱狂はなく、参加者の厚みがあるため、相場は長続きする可能性がある
「熱気なき最高値」は違和感を伴うものの、必ずしも一時的なバブルではない。
日本株は新しい局面に入りつつあるのかもしれません。
📖 参考資料
日本経済新聞(2025年9月14日付)「日本株、熱気なき最高値(上)『バブルとは思わない』」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

