―― 若い世代が直面する「投資リスク」とは
1. 強気ムードの裏側に潜む落とし穴
日経平均株価が最高値を更新した2025年夏。20代や30代の投資家が「日本株はこれからも上がる」と強気の姿勢を見せていることは、第1回でも触れました。新しいNISA制度をきっかけに投資を始める若者は増え、もはや「株式投資は一部の人だけのもの」ではなくなりつつあります。
しかし、熱気の裏側には必ずリスクがあります。投資経験の浅い世代にとっては、株価が上昇している今だからこそ、冷静にリスクを理解する必要があります。今回は、若者世代が直面しやすい代表的な投資リスクを整理してみましょう。
2. 株価変動リスク ― 短期的な上下に翻弄されないか
最も基本的なリスクは、言うまでもなく株価の変動です。株価は企業業績だけでなく、金利動向、為替レート、地政学リスクなど様々な要因で動きます。特に最近は世界的に資金が動きやすくなっており、海外のニュースひとつで日本株が大きく動くことも珍しくありません。
経験の浅い投資家が陥りやすいのは、「短期の値動きに一喜一憂してしまう」ことです。上昇局面では過度に強気になり、下落局面では慌てて売却してしまう。その結果、長期投資のメリットを享受できず、資産形成が不安定になる危険があります。
3. 情報リスク ― SNSやネットの「過剰情報」
若い世代は情報収集力に長けています。SNSや投資系YouTubeなどで多くの情報を手に入れ、個人投資家同士が活発に意見交換をしています。これは大きな強みですが、同時に「情報リスク」も伴います。
ネット上には根拠の乏しい予測や、意図的に煽られた情報も溢れています。とくに小型株や新興企業では、限られた情報を過大評価して投資判断を誤るケースも見られます。情報の真偽をどう見極めるか、冷静な判断力が求められます。
4. 集中投資リスク ― 「好きな銘柄」に偏る危険
20代や大学生投資家に多いのが、「好きな商品を扱う会社」や「成長が期待される小型株」に集中投資してしまうことです。身近な企業に投資するのは理解しやすい反面、ポートフォリオが偏りすぎるリスクを抱えます。
1社や数銘柄に大きく投資してしまうと、その企業の不祥事や業績悪化が直撃します。市場全体の上昇トレンドに乗りながらも、個別銘柄の集中リスクをどう避けるかが課題です。
5. 流動性リスク ― 売りたい時に売れない可能性
人気の大型株であれば売買は活発ですが、新興企業や出来高の少ない銘柄では、希望するタイミングで売買できないこともあります。とくに学生や若手投資家が好む「まだ知られていない小型株」は、値動きが激しく、売りたいときに売れない「流動性リスク」が高まります。
株価が一気に下がった時、思った以上に損失が拡大する可能性があることを意識しておく必要があります。
6. 心理的リスク ― 過去を知らない世代の弱点
若者世代の多くは、バブル崩壊やリーマン・ショックのような大暴落を経験していません。そのため「株価は長期的に上がる」という前提を強く信じがちです。もちろん、経済の成長とともに株価が上昇するのは自然な流れですが、その過程には必ず調整や下落局面が存在します。
経験が少ないと「株価は常に右肩上がり」という誤解を持ち、想定外の下落に直面したときにパニックを起こしやすいのです。冷静さを保つためには、過去の歴史を学び、自分の投資スタンスを客観的に見直すことが欠かせません。
7. まとめ ― リスクを知ることが投資の第一歩
投資の世界にリスクはつきものです。しかし、リスクを理解していれば必要以上に恐れることはありません。若い世代にとって重要なのは、
- 短期的な値動きに振り回されない
- 情報を鵜呑みにせず、複数の視点で確認する
- 分散投資を意識する
- 過去の市場から学ぶ
といった姿勢を持つことです。
株式市場の「世代交代」が進む中で、若者世代が健全に投資を続けられるかどうかは、日本全体の資産形成文化にとっても大きな意味を持ちます。最高値更新という華やかなニュースに隠れたリスクを直視することこそ、次の一歩につながるのです。
📖 参考記事
日本経済新聞(2025年9月17日 朝刊)
「日本株、熱気なき最高値(中) 『まだ上がる』若者は強気」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
