日本企業が「変わり始めた」今こそ注目― “変革銘柄”の見つけ方をやさしく解説 ―

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日本企業の「変化の波」はどこから始まった?

いま、株式市場では「日本企業が変わり始めている」という声がよく聞かれます。
そのきっかけとなったのが、2023年3月に東京証券取引所が出した要請でした。

「資本コストや株価を意識した経営をしてください」

…一見、難しそうな言葉ですよね。
でもこの要請が、日本企業の“お金の使い方”を大きく変えるきっかけになりました。

もともと日本には「PBR(株価純資産倍率)」が1倍を下回る企業がたくさんありました。
PBRが1倍を切るというのは、「会社を解散して資産を売れば、いまの株価より高い」という状態。
つまり、株主から見て割安に放置されているということなんです。

この状況を変えるために、企業はようやく「余ったお金を眠らせずに、成長に使おう」と動き出しました。
これが「PBR改革」と呼ばれる流れです。


企業の“変革”が株価を動かす時代へ

2025年10月。日経平均株価はついに4万8000円台を突破しました。
もちろん海外投資家の資金流入もありますが、背景には日本企業の本気の変化があります。

たとえば――
機械部品大手のTHKは、自己資本を700億円近く減らす方針を発表。
その直後、株価はストップ高になりました。
「資本を効率よく使う」という姿勢を明確に示したことが、投資家に評価されたのです。

また、照明器具メーカーの遠藤照明は、初めて「配当性向30%」という株主還元方針を掲げました。
これまで情報発信が控えめだった企業が、投資家への説明を強化するようになってきています。

こうした動きに共通するのは、「資本効率を上げるための具体的な行動」を見せていること。
株価が上がる企業には、必ず「なぜ今、それをやるのか」という理由があります。


企業の“お金の使い方”を見れば未来が見える

投資家が注目すべきポイントのひとつが、
「キャッシュアロケーション(資金配分)」という考え方です。

簡単に言えば、「会社に入ってくるお金をどう使うのか」という方針。
成長のために投資するのか、株主に還元するのか、あるいは財務を強化するのか。
ここに企業の本気度が表れます。

たとえば住宅設備のタカラスタンダードは、営業キャッシュフローに加えて、
政策保有株や不動産の売却で得たお金を、成長投資と株主還元に350億円ずつ配分する方針を発表。
この明確な姿勢が評価され、株価はその後約4割上昇しました。


本気の企業は「事業の選択と集中」に踏み込む

資本政策の見直しだけでなく、事業構造そのものを変える企業も出てきました。

たとえば繊維大手のグンゼ
「聖域なき構造改革を完遂する」と宣言し、
アパレル中心から、医療・半導体素材といった高収益分野へシフトしています。
株価も約7年ぶりの高値圏まで上昇しました。

こうした企業は、「どの事業に未来があるのか」を見据えて、
ポートフォリオ(事業の組み合わせ)を整理しています。
経営陣の意思決定が明確な企業ほど、投資家からの信頼を集めています。


“変化前夜”のサインを見逃さないために

これから変わりそうな企業を見つけるには、いくつかのヒントがあります。

① アクティビスト(物言う株主)が入っている

外部からのプレッシャーが働くと、経営改革が進みやすい傾向があります。
余剰資金や不動産を多く持つ企業が狙われやすいです。

② 持ち合い株を解消している

グループ内で株を持ち合う“旧来型の関係”を見直す動きが出た企業は、
個人投資家向けIRを強化するケースが多いです。

③ 経営陣の交代・若返り

新しい社長が就任するタイミングは、変革のチャンス。
40~50代の若手経営者が増え、思い切った改革を進める動きも見られます。


投資は「数字」だけでなく「変化の物語」を見る時代へ

これまでの日本株投資は、「業績」や「配当」など、
過去の数字に注目するスタイルが主流でした。

でもこれからは、
「この企業は何を変えようとしているのか」
という“未来の物語”に投資する時代です。

PBR改革をきっかけに、企業は「お金をどう使うか」を問われるようになりました。
そして投資家も、企業の変化を見抜く目を持つことで、長期的なリターンを狙うことができます。

守りから攻めへ――。
いま、日本の資本市場は新しいステージに立っています。
変化を恐れず、一歩を踏み出す企業にこそ、未来のチャンスがあるのです。


出典

出典:2025年10月11日 日本経済新聞朝刊
「株式投資、『変革』銘柄の選び方」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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