年度替わりの時期は、家族の就職や退職、働き方の変化などにより扶養関係が変わりやすいタイミングです。
扶養という言葉は日常的に使われますが、実際には 税制上の扶養 と 社会保険上の扶養 の二つの制度があり、それぞれ制度目的や要件、手続き方法が異なります。
税金の制度と社会保険の制度が混同されることは少なくありません。
例えば、税制上の扶養から外れても社会保険の扶養には残る場合や、その逆のケースもあります。
この記事では、新年度前に確認しておきたい 税制上の扶養と社会保険の扶養の違い、そして 扶養に変更が生じた場合の手続き について整理します。
税制上の扶養とは何か
税制上の扶養とは、扶養親族がいる場合に納税者の所得税や住民税の負担を軽減する制度です。
代表的なものとして、次のような所得控除があります。
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
これらは、一定の条件を満たす親族を扶養している場合に、納税者本人の課税所得を減らす仕組みです。
税制上の扶養親族の主な要件は次のとおりです。
- 6親等以内の血族または3親等以内の姻族
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が58万円以下(給与のみの場合は給与収入103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者として給与を受けていない
また、配偶者については配偶者控除または配偶者特別控除の対象となりますが、次の条件が必要です。
- 民法上の配偶者であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 配偶者の所得が一定以下であること
- 納税者本人の所得が1,000万円以下であること
なお、税制上の扶養では 同居しているかどうかは必ずしも要件ではありません。
離れて暮らす親などであっても、生計を一にしていれば扶養親族に該当する可能性があります。
社会保険上の扶養とは何か
社会保険上の扶養とは、健康保険や公的年金において、被保険者に生計を維持されている家族が 保険料を負担せずに保障を受けられる仕組み です。
対象となる制度は主に次の二つです。
- 健康保険の被扶養者制度
- 国民年金の第3号被保険者制度
健康保険では、原則として 三親等以内の親族 が対象になります。
ただし、誰でも扶養に入れるわけではなく、収入などの要件があります。
主な収入要件は次のとおりです。
- 年収130万円未満
- 被保険者の収入の2分の1未満
また、別居している場合には
- 年収130万円未満
- 被保険者からの仕送り額未満
という条件が必要になります。
さらに、60歳以上の人や障害者の場合は収入基準が緩和され、年収180万円未満となります。
年金については、会社員や公務員などの 厚生年金加入者(第2号被保険者)の配偶者 が対象となり、条件を満たすと 第3号被保険者 になります。
この場合、本人は国民年金保険料を負担する必要はありません。
税制上の扶養と社会保険の扶養の違い
税制と社会保険の扶養は、制度の目的がそもそも異なります。
税制上の扶養は 税負担の軽減 を目的とした制度です。
一方、社会保険の扶養は 保険料負担なしで医療や年金の保障を受ける制度 です。
また、扶養の範囲や収入基準にも違いがあります。
税制上の扶養では所得金額が基準になりますが、社会保険では主に年収ベースで判定されます。
そのため、同じ家族でも
- 税制上は扶養
- 社会保険では扶養ではない
というケースも生じます。
典型的な例として、年収が103万円を超えて130万円未満の配偶者の場合があります。
この場合、税制上の扶養控除は受けられませんが、社会保険の扶養には該当する可能性があります。
このように 両制度は独立した仕組みである という点を理解しておくことが重要です。
扶養状況が変わった場合の手続き
扶養状況に変更が生じた場合、税制と社会保険では手続き方法が異なります。
税制上の扶養の手続き
税制上の扶養は、勤務先へ提出する
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
によって申告します。
扶養状況が変わる場合は、
異動後、最初に給与を受ける日の前日まで
に提出する必要があります。
通常は年末調整の際に提出する書類ですが、扶養の変更があった場合はその都度提出します。
社会保険の扶養の手続き
社会保険の扶養に変更があった場合は、
発生から5日以内
に勤務先を通じて届け出を行う必要があります。
主な手続きは次のとおりです。
- 健康保険の被扶養者(異動)届
- 国民年金第3号被保険者関係届
扶養から外れる場合には、健康保険証の返却も必要になります。
手続きが遅れると、医療費の給付や年金記録に影響が出る可能性もあるため注意が必要です。
結論
扶養制度には 税制上の扶養 と 社会保険上の扶養 があり、それぞれ制度の目的や判定基準、手続き方法が異なります。
特に新年度の時期は、就職や退職、働き方の変化によって扶養状況が変わることが多い時期です。
確認しておきたいポイントは次の三つです。
- 税制と社会保険では扶養の判定基準が異なる
- 扶養の変更があれば速やかに手続きを行う
- 特に社会保険は5日以内の届け出が必要
扶養制度は、税負担や社会保険料、さらには医療や年金の保障にも関わる重要な仕組みです。
新年度を迎える前に家族の働き方や収入状況を確認し、必要な手続きを行うことが大切です。
参考
日本FP協会 トレンドウォッチ
新年度前に確認したい、扶養の手続きと社会保険(2026年)
国税庁 所得税の扶養控除に関する解説
全国健康保険協会 被扶養者制度の概要
日本年金機構 第3号被保険者制度の解説

