近年、地方への大規模投資が相次いでいます。国の補助金を活用した民間投資は、2021~2025年度で地方だけでも約13兆円に達しました。
日本経済新聞は、この投資額を人口で割った指標を「投資誘致力」と定義し、地域別の特徴を明らかにしています。そこから見えてくるのは、従来の「東京一極集中」とは異なる、産業立地の新しい地図です。
本稿では、半導体・EV・医薬品などの分野を軸に、地方投資がどのように進み、地域再生にどのような意味を持つのかを整理します。
投資誘致力という新しい物差し
投資誘致力とは、一定期間に行われた投資額を人口で割ったものです。2021年時点の人口を基準に算出され、全国平均は約14万円でした。
この指標で見ると、地方圏の存在感が際立ちます。三大都市圏の平均が約7万円にとどまる一方、その他の39道県は平均20万円と、約3倍の水準です。
金額の多寡だけでなく、「どの地域に、どの産業が集まっているのか」を示す点で、地域経済を考えるうえで重要な視点となっています。
半導体投資が地方に集まる理由
投資誘致力の上位には、半導体関連投資を取り込んだ地域が多く並びます。
熊本県は、台湾積体電路製造(TSMC)の進出により全国トップとなりました。北海道も、ラピダスの工場立地で上位に入っています。
半導体量産工場は、稼働後も2~3年ごとに最新設備の導入が必要とされ、継続的な投資と雇用を生み出します。また、広大な用地、大量の電力や水を必要とするため、相対的に地方の方が立地条件を満たしやすいという特徴があります。
三重県に見る「積み上げ型」投資の強さ
三重県は、住民1人あたりの投資額で東京都の約7倍に達し、全国2位となりました。
特徴的なのは、1兆円規模の単独投資に依存せず、中小規模の投資を数多く積み上げている点です。
四日市市を中心に、キオクシアホールディングスの製造拠点や、半導体洗浄剤メーカーなどが集積しています。
三重県は、電力・水資源・人材という半導体産業に不可欠な条件がそろっており、産学官連携による人材育成にも力を入れています。大学での専門コース設置や、将来の電力需要を見据えた洋上風力調査など、長期視点の取り組みが投資を呼び込んでいます。
関東地方でも進む地方分散型投資
関東圏でも、東京以外の県が存在感を高めています。
群馬県では、SUBARUとパナソニックエナジーによるEV向け蓄電池工場への大型投資が進んでいます。
栃木県では、キヤノンが半導体露光装置の生産能力を拡大し、自治体は産業団地整備を急いでいます。
山梨県では、半導体関連に加え、医療・医薬、水素エネルギーといった分野への投資が広がっています。
医薬品・エネルギー分野がもたらす多角化
山梨県では、テルモがバイオ医薬品の受託製造工場を建設するなど、医療分野での投資が進んでいます。
また、グリーン水素製造拠点や水電解装置工場など、脱炭素を見据えたエネルギー関連投資も特徴です。
こうした動きは、既存の技術や人材を異分野に応用し、地域産業の裾野を広げる効果があります。
投資誘致が地域にもたらす意味
地方への投資拡大は、単なる雇用創出にとどまりません。
関連企業の集積、人材育成、インフラ整備が連動することで、地域にイノベーションが生まれやすい環境が整います。
半導体やEV、医薬品といった分野は、国の産業安全保障とも密接に関わっており、全国に分散した立地は経済的なリスク分散にもつながります。
結論
投資誘致力という指標から見えるのは、地方が「コストの安い受け皿」ではなく、「戦略的な成長拠点」として選ばれ始めている現実です。
半導体を核に、EV、医薬品、エネルギー分野へと広がる投資は、地域経済の構造そのものを変えつつあります。
今後の地域再生の鍵は、単発の大型投資ではなく、人材・インフラ・産業政策を組み合わせた持続的な投資環境づくりにあるといえるでしょう。
参考
・日本経済新聞「投資誘致力、地方に13兆円 三重は東京の7倍、半導体関連上位」(2026年1月10日朝刊)
・日本経済新聞「テルモ、山梨に医薬品工場 大企業の投資相次ぐ」(2026年1月10日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

