投資有価証券の評価 ― 株価の上げ下げが決算にどう表れる?

会計
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企業は本業の事業だけでなく、株式や債券などの「投資有価証券」を持っていることがあります。特に日本企業は昔から「持ち合い株」と呼ばれる形で、取引先の株を保有する慣習がありました。では、こうした投資有価証券は決算書にどう反映されるのでしょうか?今回は「投資有価証券の評価」をテーマに解説します。


投資有価証券とは?

「投資有価証券」とは、企業が長期的に保有する株式や債券のことです。銀行や証券会社はもちろん、製造業やサービス業でも取引先の株式を持っている場合があります。

株価や金利の変動によってこれらの価値が上下すると、決算にも影響が出ます。つまり「証券投資で得をした・損をした」分が、会計数字に表れるのです。


評価の仕組み

投資有価証券は、時価評価(現在の市場価格での評価)が原則です。

  • 株価が上がれば評価益が出る
  • 株価が下がれば評価損が出る

この増減は「その他有価証券評価差額金」などとして純資産の部に計上されます。つまりすぐに損益計算書には出てこない場合もありますが、決算書のどこかには必ず反映されているのです。


売却した場合は「実現益・損」

保有している株を売却したときは、差額が「投資有価証券売却益」や「売却損」として損益計算書に直接反映されます。

例えば、1株1,000円で仕入れた株を1,200円で売れば200円の売却益。逆に800円で売れば200円の売却損です。


企業業績にどう響くのか

株価は日々動いているため、企業が持つ有価証券の価値も常に変化します。2024年度の決算では、株価の上昇を背景に多くの企業が投資有価証券の評価益を計上しました。

一方で、株価が下落すると評価損が発生し、自己資本比率の低下や財務の健全性に影響することもあります。ときには「減損処理」といって、下落分を損失として確定させるケースもあります。


投資家の視点

投資家や経済ニュースを読むときには、次の点に注目すると理解が深まります。

  • 利益が増えたのは本業か、それとも投資有価証券の評価益か?
  • 評価損や売却損は一時的なものか、構造的なリスクか?
  • 株価の変動が財務にどの程度影響する体質なのか?

たとえば製造業の利益が大幅に増えたとニュースで見ても、それが「自動車の販売好調」ではなく「株式の売却益」だったら、意味合いは大きく変わります。


まとめ:株価は企業の決算にも映る

投資有価証券は、企業にとって「資産」でもあり「リスク要因」でもあります。株価が上がれば財務にプラス、下がればマイナス。つまり、私たちが証券投資で一喜一憂するのと同じことが、企業規模で起きているのです。

決算書を見るときには「本業のもうけ」と「投資による損益」を分けて考えることが重要です。株価次第で業績が大きく動く企業もあれば、影響が限定的な企業もあります。その違いを知ることが、企業理解を深めるポイントになります。


👉 次回(第4回)は「減損」について解説します。企業が保有する資産の価値が大きく下がったときにどのように会計処理されるのかを取り上げます。


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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