確定申告では、自分だけでなく“家族の収入”も税額に影響します。特に、配偶者控除や配偶者特別控除は、家計に直接関わる控除のため、毎年多くの質問が寄せられるポイントです。
今年(令和7年)からは、配偶者控除の判定基準が大きく変わり、「103万円の壁」から「160万円の壁」へと移行しました。
ただし、これはあくまで 配偶者控除の要件が変わっただけ であり、第4回では以下を中心に整理します。
- 扶養・配偶者控除の確定申告での確認ポイント
- 控除が使えるかどうかの判断基準
- 年末調整で適用し忘れた場合の対応
- 今年の変更点(160万円の壁)の位置づけ
1. 配偶者控除・配偶者特別控除は「確定申告の定番科目」
確定申告では、自分だけでなく、家族の収入によって
「控除が使えるか」「控除額が増減するか」が変わります。
対象となるケースは次のようなときです。
- 年末調整をしていない(転職・退職を含む)
- 年末調整で控除の記載を間違えた
- 配偶者の収入が年末にずれ込み、結果として基準を超えた/下回った
- 年末調整後に収入が変動した
- 配偶者の副収入が想定より多かった
つまり、年末調整をした人でも、修正目的で確定申告が必要になることがある控除です。
2. 配偶者控除を使える条件(確定申告で確認すべき点)
確定申告で配偶者控除を申請するとき、確認すべきは次の3点です。
■(1)婚姻関係があること
内縁では不可。正式な配偶者が対象です。
■(2)本人と配偶者の双方が一定の所得以下であること
今回の改正で最も変わったポイントです。
■(3)配偶者本人が「扶養に入っていないこと」
ここで言う扶養は「税金の扶養」。
社会保険の扶養とは別制度です。
3. 今年から変わる基準:「160万円の壁」はここで登場する
配偶者控除の判定基準は、確定申告で控除額を確認するための“数字”です。
✔ 配偶者控除(満額)が使える収入
配偶者の年収:160万円以下
✔ 配偶者特別控除が使える収入
160万円超〜201.6万円以下
✔ 控除なし
201.6万円超
ここで大事なのは、
控除額の仕組みは変わらない(分類は同じ)
という点です。
変わったのは
配偶者控除の対象となる上限年収が「103万円 → 160万円」に引き上がった
という“数字部分”のみ。
4. よくあるミス:年末調整と確定申告で判定額が変わる
確定申告では次のような“ズレ”が発生することがあります。
● 年末調整の「配偶者の年収見込み」が実際と異なる
- 年末にシフトが増える
- ボーナスが追加される
- 副収入の発生
などで実際の収入が見込みとズレるケースは毎年多発します。
● 年末調整後に実際の収入が確定したら控除額が変わる
その場合は、
翌年の確定申告で調整する(=やり直す)
必要があります。
5. 確定申告での手続き方法
シリーズと同じ案内スタイルで簡潔にまとめると、以下の流れです。
- 配偶者の年間収入を確定させる
- 控除額を国税庁の控除表で確認
- 確定申告書の「配偶者控除等」の欄に記入する
- 必要に応じて住民税申告にも反映される
大がかりな書類は不要で、配偶者の源泉徴収票があれば足ります。
結論
確定申告では、“配偶者控除・配偶者特別控除が正しく適用されているか”を確認することが大切です。今年は基準が 103万円 → 160万円 に引き上げられたため、年末調整の見込み額と実際の収入が異なる場合、控除額が変わる家庭が増えると考えられます。
- 年収160万円以下なら配偶者控除の対象
- 160万円超〜201.6万円は配偶者特別控除
- 年末調整と確定申告で判定が変わることがある
- 必要に応じて確定申告で控除額を修正する
- 「税金の扶養」と「社会保険の扶養」は別制度
出典
- 国税庁「配偶者控除・配偶者特別控除(令和7年度税制改正)」
- 税制改正資料(令和7年度大綱)
- 内閣府「年収の壁に関する情報」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
