戦争と株式市場――100年の歴史から見る市場の反応

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戦争や軍事衝突が発生すると、株式市場は大きく揺れ動きます。ニュースが伝わると株価が急落し、投資家の間には不安が広がります。こうした状況は「有事の株売り」と呼ばれ、金融市場ではよく知られた現象です。

しかし、長期的な視点で見ると、戦争そのものが株式市場の長期的な下落を招くケースは必ずしも多くありません。むしろ、戦争が発生した後に株価が回復し、その後上昇する例も多く見られます。

本稿では、過去約100年の歴史を振り返りながら、戦争と株式市場の関係を整理します。


戦争が起きると株式市場は急落する

戦争や軍事衝突が発生した直後、株式市場は大きく下落することが一般的です。理由は単純で、将来の見通しが急激に不透明になるためです。

企業活動への影響が読めなくなり、エネルギー価格の上昇や国際貿易の停滞といったリスクも高まります。このため投資家は株式を売却し、安全資産へ資金を移す傾向があります。

例えば、近年でも次のようなケースがありました。

・1990年 湾岸戦争
・2001年 アメリカ同時多発テロ
・2022年 ロシアによるウクライナ侵攻

これらの出来事の直後には、世界の株式市場が大きく下落しました。短期的には、戦争は株式市場にとって明確なマイナス要因になります。


歴史的には株価は比較的早く回復する

しかし、長期的なデータを見ると、戦争による株価下落は比較的短期間で収束することが多いとされています。

多くの調査では、地政学的事件の発生後、株式市場は数週間から数カ月で回復する傾向があると指摘されています。ある分析では、第2次世界大戦以降の地政学的事件を対象に調べた結果、株価は平均して数週間程度で底を打ち、その後回復する傾向が確認されています。

また、戦争の発生から半年程度の期間で株価が上昇しているケースも多く報告されています。

これは、市場が戦争の影響を比較的早く織り込み、状況がある程度見通せるようになると、投資家の心理が落ち着くためと考えられています。


株価を決めるのは戦争よりも経済環境

株式市場の長期的な動きを決めるのは、戦争そのものではなく、経済の基礎条件であるといわれています。

具体的には次のような要素です。

・インフレ率
・金利
・景気動向
・企業収益

戦争が起きても、これらの要因が大きく悪化しなければ、株式市場は比較的早く回復することがあります。

逆に、戦争が経済の悪化を引き起こした場合には、株価の下落が長期化する可能性があります。


戦争とインフレの関係

戦争が経済に与える影響として重要なのが、エネルギー価格の上昇です。特に中東で紛争が起きると、原油価格が急騰することがあります。

原油価格の上昇は企業のコスト増につながり、インフレ圧力を強めます。インフレが加速すれば、中央銀行は金融引き締めを続ける可能性があり、株式市場にとっては逆風となります。

歴史的に見ても、株価下落が長期化したケースの多くでは、インフレや景気後退が同時に発生しています。

つまり、戦争の影響を判断するうえでは、エネルギー価格やインフレの動きが重要なポイントになります。


市場が最も警戒するのは長期化

金融市場が最も警戒するのは、紛争の長期化です。

短期間で終わる軍事衝突であれば、市場は比較的早く状況を織り込みます。しかし、紛争が長引き、エネルギー価格の上昇や国際貿易の混乱が続く場合には、世界経済に深刻な影響が及ぶ可能性があります。

特にエネルギー供給の要衝となる地域で紛争が起きた場合、その影響は世界経済全体に広がる可能性があります。

そのため、市場参加者は戦争の軍事的展開だけでなく、エネルギー市場や金融政策への影響にも注目しています。


結論

戦争や軍事衝突が起きると、株式市場は短期的に大きく動揺します。しかし、歴史的なデータを見ると、戦争そのものが株式市場の長期的な下落を招くケースは多くありません。

株式市場の長期的な動きを決めるのは、インフレや金利、景気といった経済の基礎条件です。戦争がこれらの要因にどの程度影響を与えるかが、株価の方向性を左右します。

その意味では、戦争のニュースそのものよりも、エネルギー価格や金融政策の動向を注視することが、金融市場を理解するうえで重要であると言えるでしょう。


参考

日本経済新聞 2026年3月6日
ウォール街ラウンドアップ 有事の株売りいつまで

日本経済新聞 2026年3月6日
有事には現金が王様

Morgan Stanley 地政学ショックと株式市場分析

LPL Financial 地政学イベントと株式市場データ分析

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