就職氷河期世代と資産形成――なぜ貯蓄が少ないのか

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就職氷河期世代は現在、40代後半から50代前半に差しかかっています。バブル崩壊後の厳しい雇用環境のなかで社会に出た世代であり、正規雇用の機会が少なかったことが、その後の人生設計にも影響を与えてきました。

その影響の一つとして指摘されているのが、資産形成の遅れです。老後資金問題が議論される際にも、氷河期世代は貯蓄額が相対的に少ない可能性があるといわれています。本稿では、就職氷河期世代の資産形成がなぜ遅れやすいのか、その背景となる構造的な要因を整理します。


若年期の雇用環境が資産形成に影響する

資産形成は一般的に、若い時期から長期間にわたり積み上げていくことで成り立ちます。例えば20代から積立投資や貯蓄を始めた場合、複利効果により長期的な資産形成が可能になります。

しかし、就職氷河期世代は若年期に安定した就業機会を得ることが難しい状況にありました。企業の採用抑制が続いた結果、正社員として働けない人も多く、派遣やアルバイトなどの非正規雇用で働くケースが増えました。

非正規雇用では賃金水準が低くなりやすく、将来に向けた貯蓄や投資に回す余裕が生まれにくくなります。資産形成のスタートが遅れることで、その後の蓄積にも影響が及ぶことになります。


賃金格差の長期化

氷河期世代の資産形成を難しくしたもう一つの要因は、賃金格差の長期化です。

非正規雇用から正規雇用に移行できた場合でも、同年代の正社員と比べて賃金水準が低い状態が続くことがあります。昇進や昇給の機会が限られる場合もあり、生涯賃金の差につながる可能性があります。

資産形成は所得と密接に関係しているため、賃金格差が続くと貯蓄額にも差が生じやすくなります。結果として、同じ年齢層の中でも資産状況に大きなばらつきが生まれることになります。


企業年金制度との関係

資産形成の観点では、企業年金制度の影響も大きいとされています。

多くの企業では、退職金制度や企業年金制度を通じて老後資金の一部が形成されます。しかし、非正規雇用ではこうした制度の対象外となるケースが多く、老後資金を自ら準備する必要があります。

また、企業型確定拠出年金などの制度も正社員を中心に導入されている場合が多く、非正規雇用の労働者が利用できないことがあります。

このため、氷河期世代の中には、企業年金による資産形成の機会が少なかった人も存在します。


住宅取得の遅れ

資産形成には住宅取得も大きな影響を与えます。

住宅は家計にとって大きな資産となることが多く、住宅ローンの返済を通じて資産形成が進む側面があります。しかし、雇用が不安定な場合、住宅ローン審査に通りにくいことがあります。

その結果、持ち家取得の時期が遅れたり、賃貸住宅に住み続けるケースが増える可能性があります。持ち家の有無は老後の生活費にも影響を与えるため、資産形成の面でも重要な要素となります。


長期投資の機会損失

近年はNISAや確定拠出年金など、資産形成を支援する制度が拡充されています。しかし、これらの制度を活用するには一定の所得余力が必要になります。

氷河期世代の中には、生活費の確保が優先となり、長期投資を始める余裕がなかった人も少なくありません。

また、資産形成を始める時期が遅くなると、投資期間が短くなるため複利効果も小さくなります。これも資産格差を広げる要因の一つとなります。


資産格差は世代内でも広がっている

氷河期世代の資産状況は一様ではありません。安定した職業に就いた人や転職でキャリアを築いた人の中には、十分な資産を形成しているケースもあります。

一方で、非正規雇用が長期化した人や就業機会が限られていた人では、貯蓄額が少ないケースも見られます。

つまり、氷河期世代の問題は世代間格差だけでなく、世代内格差の拡大という側面も持っています。


結論

就職氷河期世代の資産形成の遅れは、個人の努力不足ではなく、若年期の雇用環境の影響を強く受けた結果といえます。

非正規雇用の増加、賃金格差の長期化、企業年金制度の利用機会の違いなど、複数の要因が重なり、資産形成の機会が限られた人も存在します。

現在、この世代は老後を見据えた生活設計を考える段階に入りつつあります。今後は雇用政策だけでなく、資産形成支援や社会保障制度との連携も含めた長期的な政策対応が重要になると考えられます。


参考

総務省 家計調査
厚生労働省 労働力調査
内閣官房 就職氷河期世代等支援プログラム
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