小規模企業共済・iDeCoの控除と確定申告の実務 ― 自営業者・フリーランスの老後資金対策(確定申告・税制改正ナビ 第8回)

税理士
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自営業者やフリーランスにとって、将来の老後資金づくりと税負担軽減を両立できる代表的な制度が
「小規模企業共済」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。
どちらも掛金が全額所得控除の対象となり、節税効果が非常に高い仕組みです。
一方で、控除申告の際には証明書の添付や掛金区分の違いに注意が必要です。
ここでは、両制度の概要と、確定申告における実務対応を整理します。


小規模企業共済とは

小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構が運営する「経営者の退職金制度」です。
個人事業主、法人役員、共同経営者などが加入でき、毎月の掛金を積み立てて将来の退職金・廃業資金とする制度です。

【主な特徴】

  • 掛金は月1,000円~7万円まで自由に設定可能(500円単位)
  • 掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象
  • 共済金は将来退職・廃業時などに受け取り可能
  • 掛金の増減変更や一時払いも可能

共済金の受け取り時には、退職所得または公的年金等の雑所得扱いとなり、受け取り方によって課税が変わります。


iDeCo(個人型確定拠出年金)とは

iDeCoは、自分で積み立てて自分で運用する年金制度です。
拠出した掛金が全額所得控除となる点で、小規模企業共済と同様に節税効果が高い制度です。

【主な特徴】

  • 掛金の上限:職業・加入区分により異なる
     例)自営業者:月額6.8万円、会社員:月額2.3万円(上限)
  • 掛金が全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
  • 運用益は非課税
  • 受取時は「退職所得控除」または「公的年金等控除」対象

iDeCoは小規模企業共済と違い、運用リスクを本人が負う点に注意が必要です。


小規模企業共済等掛金控除とは

所得税法上、「小規模企業共済」「iDeCo」「心身障害者扶養共済制度」などの掛金は、まとめて「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除を受けます。
控除額は掛金の
支払額全額で、上限はありません。

控除を受けるには、各制度の発行機関から交付される控除証明書を申告書に添付またはe-Taxで送信する必要があります。


控除証明書と発行時期

制度発行機関証明書名称発行時期
小規模企業共済中小企業基盤整備機構小規模企業共済掛金払込証明書10月下旬頃
iDeCo国民年金基金連合会確定拠出年金小規模企業共済等掛金払込証明書10月~11月頃

証明書には、当年1月~12月の掛金支払額が記載されています。
電子交付を選択している場合は、マイナポータル連携でe-Taxに自動反映されます。


確定申告での手続き

  1. 確定申告書Bの「小規模企業共済等掛金控除」欄に金額を記入
  2. 証明書を添付または電子送信
  3. 掛金の支払方法が口座振替の場合は、実際の振替月を確認(12月引落分が翌年扱いとなるケースあり)
  4. 控除証明書が届かない場合は、発行機関に再発行を依頼

e-Taxを利用する場合、マイナポータル連携で自動入力されるため、記入漏れを防げます。


実務上のポイント

  • 共済とiDeCoは併用可能(両方の掛金が全額控除対象)
  • 家族名義の掛金は対象外(本人が契約・支払っていることが条件)
  • 未納掛金は控除対象外、口座残高不足による振替不能に注意
  • 月払い・年払いを組み合わせる場合は、支払時期で年度を跨がないように確認
  • 事業所得との兼ね合い:青色申告特別控除や経費計上とは別に控除できる

また、共済を解約して共済金を受け取る際は、課税区分(退職所得か雑所得か)を必ず確認しましょう。


控除の節税効果

たとえば、課税所得が500万円の個人事業主が年間84万円(7万円×12か月)の掛金を支払う場合、
所得税・住民税を合わせておよそ15万円前後の節税効果が見込めます。
長期的に見れば、老後資金の積立と税軽減を同時に実現できる強力な仕組みです。


結論

小規模企業共済とiDeCoは、自営業者・フリーランスにとって最も実用的な「自己年金・節税制度」です。
確定申告での控除処理は比較的シンプルですが、掛金証明書の管理や支払時期の確認を怠ると控除漏れが発生します。
電子申告(e-Tax)を活用すれば、証明書の自動反映によって申告ミスを防げます。
税負担の軽減だけでなく、将来の資金準備を見据えた制度として、積極的に活用する価値があります。


出典
・国税庁「No.1155 小規模企業共済等掛金控除」
・中小企業基盤整備機構「小規模企業共済制度」
・国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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