「ふるさと納税」は、今や多くの人が利用する身近な節税制度となりました。
寄附金控除の一種として、自治体への寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から差し引かれる仕組みです。
ただし、控除上限額の計算や「ワンストップ特例制度」の適用条件を誤ると、本来の減税効果を受けられないこともあります。
ここでは、寄附金控除の基本から、実務的な計算方法・申告手順までを整理します。
寄附金控除の基本構造
寄附金控除は、一定の公益目的の団体や地方自治体などに対する寄附金を対象に、所得から一定額を控除する制度です。
個人がふるさと納税を行った場合は、「所得税の寄附金控除」と「住民税の税額控除」がセットで適用されます。
計算式は次のとおりです。
控除額 = (寄附金額 - 2,000円)
※控除上限は「所得・家族構成・住民税所得割額」によって決定
所得税からの控除は「所得控除」、住民税からの控除は「税額控除」として適用されます。
控除の内訳と計算の流れ
ふるさと納税の控除額は次の3段階で構成されています。
- 所得税からの控除(寄附金控除)
(寄附金額-2,000円)× 所得税率 - 住民税の基本分控除
(寄附金額-2,000円)× 10% - 住民税の特例分控除
(寄附金額-2,000円)×〔90%-所得税率〕 
これらを合計すると、寄附額のほぼ全額(自己負担2,000円を除く)が控除される仕組みです。
なお、寄附金控除の上限額は収入や家族構成によって異なり、総務省の「控除上限額シミュレーション」を参考にするのが一般的です。
控除上限額の目安
目安として、給与所得者(共働き世帯)の場合は次のようになります。
| 年収(目安) | 控除上限額(目安) | 
|---|---|
| 400万円 | 約43,000円 | 
| 600万円 | 約77,000円 | 
| 800万円 | 約108,000円 | 
| 1,000万円 | 約138,000円 | 
※配偶者や扶養親族の有無で金額は変動します。
この上限を超えて寄附しても、控除は頭打ちとなり、自己負担が増えるだけなので注意が必要です。
ワンストップ特例制度の概要
確定申告を行わない給与所得者などは、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用することで、申告をせずに控除を受けることができます。
【適用条件】
- 確定申告を行わない給与所得者であること
 - 寄附先が年間5自治体以内であること
 - 寄附のたびに「申請書」を寄附先自治体へ提出していること
 
特例を利用した場合、住民税から控除される形で反映され、所得税の還付は発生しません。
ただし、年の途中で医療費控除や住宅ローン控除などを理由に確定申告を行う場合、特例の適用は無効となり、改めて確定申告で寄附金控除を申告する必要があります。
申告・手続きの方法
【確定申告をする場合】
- 「寄附金受領証明書」または「寄附金控除に関する証明書(電子データ)」を入手
 - e-Taxまたは書面で確定申告書を作成
 - 「寄附金控除」欄に金額を記入し、証明書を添付または電子送信
 
2023年からは、マイナポータル連携による自動反映が可能となり、対応自治体の寄附データはe-Tax上に自動入力されます。
【ワンストップ特例を利用する場合】
- 寄附先自治体から届く「申請書」に必要事項を記入
 - マイナンバーカードや本人確認書類を添付
 - 寄附の都度、自治体へ提出(郵送またはオンライン)
 - 翌年6月ごろの住民税から控除額が反映
 
電子的申請ができる自治体も増加しており、マイナポータルを利用すれば手続きがスムーズです。
実務上の注意点
- ワンストップ特例の申請書を提出し忘れた場合は、確定申告で寄附金控除を申告すれば救済可能。
 - 年末ギリギリの寄附は、決済日が12月31日までであることを確認(振込日は対象外の場合あり)。
 - 複数自治体に寄附する場合は、寄附日・金額・証明書の管理を徹底。
 - 寄附金額のうち、返礼品相当分は「経済的利益」として課税対象ではないが、寄附額の3割以内という上限ルールに注意。
 
また、マイナポータル連携によって電子証明書のデータ化が進みつつあり、今後は証明書添付を省略できる自治体が拡大する見込みです。
結論
寄附金控除(ふるさと納税)は、正確な上限計算と申告手続きによって効果を最大化できる制度です。
特にワンストップ特例は便利な仕組みですが、他の控除を受けるために確定申告を行う場合は注意が必要です。
電子申告(e-Tax)やマイナポータル連携の導入により、控除データの自動反映が進んでおり、今後はより簡素でミスのない仕組みへ移行していくでしょう。
年末の寄附計画を立てる際には、控除上限額・寄附先数・申請期限の3点を意識し、確実な申告を行うことが重要です。
出典
・総務省「ふるさと納税ポータルサイト」
・国税庁「No.1150 寄附金控除」
・総務省「ワンストップ特例制度の概要」
・デジタル庁「マイナポータル連携による寄附金控除証明書」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
  
  
  
  