税務調査において、家事按分は「計算」よりも「説明」が問われる論点です。
同じ按分割合であっても、説明の仕方次第で、
・そのまま認められる
・追加説明を求められる
・否認される
という結果の差が生じます。
本稿では、税務調査で実際に聞かれる質問について、
否認されやすいNG説明例と、
納得されやすいOK説明例を対比しながら整理します。
質問1 なぜこの費用を家事按分しているのですか
NG例
「自宅で仕事もしているので、全部生活費というわけではないと思ったからです。」
→ 抽象的で、業務との関係が不明確です。
「仕事に使っている」という事実だけでは、必要経費部分の存在を説明できていません。
OK例
「自宅の一室を書類作成やオンライン打合せ専用として使用しており、その部屋で行う業務に対応する部分について、家事費と区分する必要があると考えました。」
→ 業務内容・場所・区分の必要性が具体的に示されています。
質問2 按分割合はどのように決めましたか
NG例
「だいたい半分くらい仕事に使っている感覚なので、50%にしました。」
→ 「感覚」「だいたい」は、調査では最も避けたい表現です。
OK例
「自宅全体の床面積が60㎡で、そのうち業務専用として使用している部屋が12㎡ありますので、床面積比で20%を業務使用割合としています。」
→ 数値の根拠と計算過程が明確です。
質問3 この割合は毎年同じですか
NG例
「特に考えていませんが、去年と同じ割合にしています。」
→ 継続性の理由がなく、形式的な処理に見えます。
OK例
「業務内容や使用場所に変化がないため、前年と同じ基準・割合を継続しています。使用状況が変わった場合は見直す予定です。」
→ 継続性と見直しの視点が示されています。
質問4 私的利用はありませんか
NG例
「ほとんど仕事で使っています。」
→ 「ほとんど」という表現は、私的利用の存在を曖昧にします。
OK例
「私的利用もありますので、全額は経費にしていません。私的利用分を除外するために、家事按分を行っています。」
→ 私的利用を認めたうえでの按分は、むしろ評価されやすい説明です。
質問5 なぜ全額経費にしていないのですか
NG例
「全部経費にすると問題になりそうなので、念のため按分しました。」
→ 税務判断ではなく、感情的・場当たり的な理由に聞こえます。
OK例
「私生活でも使用しているため、必要経費に該当する部分だけを区分して計上しています。」
→ 家事費と必要経費の区分意識が明確です。
質問6 その説明を裏付ける資料はありますか
NG例
「特に資料はありませんが、説明のとおりです。」
→ 内容が正しくても、調査では弱い対応になります。
OK例
「当時の間取り図と、自分で作成した按分計算メモがあります。毎年同じ基準で整理しています。」
→ 再現性のある説明ができています。
NG例に共通する特徴
否認されやすい説明には、共通点があります。
・抽象的
・感覚的
・根拠が言語化されていない
・家事費の原則に触れていない
これらはすべて、「説明の準備不足」が原因です。
OK例に共通する特徴
一方、認められやすい説明には、次の共通点があります。
・使用実態が具体的
・按分基準が明確
・私的利用を前提に整理している
・毎年の処理に一貫性がある
重要なのは、完璧な説明ではなく、筋の通った説明です。
結論
家事按分は、税務調査で「説明できて初めて成立する処理」です。
調査官は、節税テクニックを見ているのではありません。
・なぜ按分したのか
・なぜその割合なのか
・なぜ全額ではないのか
この3点を、自分の言葉で説明できれば、
家事按分が問題になる可能性は大きく下がります。
家事按分とは、家事費と必要経費の境界線を、自ら説明する行為です。
その視点を持つことが、最も確実な調査対応と言えるでしょう。
参考
・所得税法 第45条
・所得税基本通達 45-1
・税のしるべ 2026年1月5日「第13回/家事費とは生活全般の費用、必要経費でなくとも控除できる場面も」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
