家事按分が否認されやすい具体例――どこで線を引き誤るのか

税理士
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家事按分は、個人事業主にとって欠かせない実務処理の一つです。
一方で、税務調査において否認されやすい論点でもあります。

否認されるケースの多くは、「家事按分そのものがダメ」というよりも、
按分の考え方や説明が、家事費の原則から外れている ことに原因があります。

本稿では、実務上よく見られる否認リスクの高い家事按分の具体例を整理し、
どこで判断を誤りやすいのかを明らかにします。

例1 「とりあえず半分」という根拠のない按分

最も典型的で、かつ否認されやすいのが、
家賃、光熱費、通信費などを「なんとなく50%」で按分するケースです。

床面積、使用時間、利用頻度などの検討を一切行わず、
「自宅で仕事もしているから半分は経費」と処理している場合、
その50%が合理的であることを説明できません。

家事按分では、割合の正確性よりも合理性の説明可能性が重視されます。
根拠のない数値は、税務上は「恣意的な経費計上」と評価されやすくなります。

例2 生活の中心部分をそのまま経費化しているケース

自宅兼事務所の家賃について、
・リビング
・寝室
・キッチン
といった、明らかに生活の中心となる空間まで含めて按分対象としているケースも要注意です。

業務に使用していない、あるいは使用実態が極めて限定的なスペースについては、
そもそも必要経費部分が存在しないと判断される可能性があります。

床面積比で按分する場合でも、
「業務専用スペース」「実際に仕事をしている場所」がどこなのかを明確にしないと、
家事費の範囲を過度に侵食していると見られやすくなります。

例3 使用実態と合わない高すぎる按分割合

スマートフォン代やインターネット通信費について、
使用状況に比して過大な按分割合を設定しているケースも否認されやすい例です。

例えば、
・通話の大半が私用
・業務連絡はメールが中心
・SNSや動画視聴が主な利用
といった実態があるにもかかわらず、
通信費の80%や90%を必要経費としている場合には、疑義が生じます。

按分割合は、実態に即しているかどうか が最も重要な判断基準です。

例4 年度ごとに按分割合が大きく変わるケース

前年は30%、今年は70%といったように、
明確な理由なく按分割合が大きく変動している場合も注意が必要です。

業務内容や働き方が変わったのであれば説明は可能ですが、
そうした事情がない場合には、
「税額調整のために割合を動かしている」と疑われる可能性があります。

家事按分では、合理性と同時に継続性も重要な判断要素になります。

例5 家事費部分を切り分けず「全部経費」にしているケース

業務と私生活の両方で使用しているにもかかわらず、
・パソコン
・スマートフォン
・自家用車
などを全額必要経費としているケースも否認リスクが高い処理です。

「仕事にも使っている」という事実だけでは、全額経費とはなりません。
私的利用が一定程度存在する以上、家事費部分の切り分けが求められます。

全額経費が認められるのは、
主として業務に使用されていると客観的に説明できる場合に限られます。

例6 説明資料やメモを一切残していないケース

家事按分の処理自体は妥当であっても、
・なぜその割合にしたのか
・どの基準を使ったのか
といった記録が一切残っていない場合、調査対応が困難になります。

税務調査では、過去数年分をまとめて確認されることも珍しくありません。
記憶に頼った説明は説得力を欠き、結果として否認につながる可能性があります。

結論

家事按分が否認されやすいケースには、共通点があります。
それは、家事費と必要経費の区分を理屈で説明できないことです。

・根拠のない割合
・使用実態と乖離した按分
・一貫性のない処理
・説明資料の欠如

これらはすべて、家事費の原則理解が不十分なまま処理を行った結果といえます。

家事按分は、節税テクニックではありません。
生活費と業務費を冷静に切り分けるための整理手法です。

その視点を持つことで、否認リスクを抑えた、安定した申告につながります。

参考

・所得税法 第45条
・所得税基本通達 45-1
・税のしるべ 2026年1月5日「第13回/家事費とは生活全般の費用、必要経費でなくとも控除できる場面も」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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