実際の事例から学ぶ② ― 老後資金と空き家

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日本の空き家問題と対策(第4回)

空き家の問題は「相続した家をどうするか」だけではありません。
「自分が住みたいけれど資金が足りない」「親が施設に入ったけれど家が残ってしまった」――このように、老後の暮らしや介護と深く結びついた事例も数多く存在します。

今回は、空き家と老後資金・介護が絡み合う2つの事例を紹介します。そこから、家を資産としてどう活かすか、どんな解決策があるのかを一緒に考えていきましょう。


事例3:住みたいけれど建替資金が足りない60代夫婦

状況

  • 都市部で暮らしていた60代前半の夫婦。
  • 子どもが独立したのを機に、地方にある実家に戻りたいと考えた。
  • しかし建物は老朽化が激しく、耐震性にも問題がある。安全に暮らすには建替えが必要だった。
  • 手元資金は少なく、退職金や老後資金を使うのも不安。

対応策
夫婦が利用したのは「リバースモーゲージ」という仕組みです。

  • 自宅の土地や建物を担保に融資を受け、建替資金を調達。
  • 毎月の返済は利息のみ。元本は死亡時や売却時にまとめて精算。
  • 老後資金を切り崩さずに住まいを確保できた。

結果
実家を建替えて安心して暮らす環境を整えることができた。子ども世代への相続には影響するが、「今の生活の安心」を優先した選択となった。

学び

  • 空き家を「金融資産」として捉える発想が有効。
  • 住むための資金が足りない場合でも、工夫次第で道は開ける。
  • ただし将来の資産価値や金利変動リスクも踏まえて検討する必要がある。

事例4:施設入所で自宅が空き家に…

状況

  • 80代女性が一人暮らしをしていたが、介護が必要となり施設に入所。
  • 自宅は空き家となり、近くに管理できる親族もいない。
  • 放置すれば「管理不全空き家」に指定されるリスクがあった。

対応策
地域の不動産会社を通じて「DIY賃貸」として貸し出すことに。

  • 借り手が修繕やリフォームを負担する代わりに、低い家賃で住める仕組み。
  • 地域住民や外国人が入居し、家は再び人の住む場所に。
  • 所有者にとっては、管理の手間が減り、家賃収入も得られるようになった。

結果
施設の生活費を補う収入源となり、家の老朽化や防犯上の不安も解消。地域にとっても「空き家」ではなく「住まい」として機能する形となった。

学び

  • 空き家を「地域資源」として活用する発想が大切。
  • 管理できない家でも、人に使ってもらうことで価値が生まれる。
  • 施設入所や介護と空き家の問題は切り離せない。

老後と空き家が結びつく理由

事例3と4は、どちらも老後の暮らしと空き家が重なったケースです。なぜこうした問題が起こるのでしょうか。

  1. 住まいの選択と資金が直結するから
    → 住み替えや建替えにはまとまった費用が必要。老後資金とのバランスを考えざるを得ない。
  2. 介護や施設入所のタイミングで家が空くから
    → 高齢者が住まなくなると、その家は空き家になりがち。管理者がいない場合、すぐに地域課題化する。
  3. 相続を待たずに対応を迫られるから
    → 相続前に「家が空いた」状態になることが多く、誰がどう管理するかが問題になる。

放置しないための行動ポイント

老後や介護と関わる空き家問題に直面したとき、次のような行動が役立ちます。

  • 早めに資金計画を立てる
    → 建替えや住み替えを考えているなら、ローンやリバースモーゲージなどの方法を調べておく。
  • 施設入所が決まったらすぐに家の扱いを検討
    → 空き家のままにするのではなく、貸す・売るなど方向性を決める。
  • 地域や自治体の制度を活用する
    → 空き家バンク、リフォーム補助金、DIY賃貸の仲介などがある。
  • 家族で話し合う
    → 誰が管理するのか、売却するのかを共有しておくことが重要。

おわりに

今回の事例から分かるのは、空き家は「老後」「介護」と密接に関わっているということです。

  • 住みたいけれど資金が足りない → 家を資金源に活用する方法がある。
  • 管理できない → 人に貸すことで地域資源として活かせる。

空き家は、放置すれば負担になり、工夫すれば資産や安心につながります。

次回(第5回・最終回)は、これまでのまとめとして「空き家とどう向き合えばよいか」を整理し、実際に検討する際のチェックポイントを紹介します。


📌 参考資料:FPジャーナル 2025年4月号「日本の空き家の現況と対策」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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