定期金に関する権利の評価 ― 相続税法24条の仕組み

税理士
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相続税の実務では、生命保険や退職金のように金銭そのものではなく、将来にわたって給付を受ける権利が問題となることがあります。
これらは「定期金に関する権利」と呼ばれ、相続税法では特別な評価方法が定められています。

2026年に東京地裁で判断が示された米国遺族年金の事件でも、この定期金に関する権利の評価方法が大きな争点となりました。
将来支払われる年金の価値を、相続開始時点でどのように金額に換算するのかという問題です。

本稿では、相続税法24条に基づく定期金の評価方法と、その実務上のポイントについて整理します。


定期金に関する権利とは何か

定期金とは、一定の期間または一定の条件のもとで、継続的に給付を受ける仕組みをいいます。
代表的な例としては次のようなものがあります。

・個人年金
・企業年金
・遺族年金
・終身年金
・退職年金

これらは一括で金銭を受け取る財産とは異なり、

将来の給付を受ける権利

という形で存在しています。

しかし相続税は、相続開始時点で取得した財産を課税対象とするため、将来の給付であっても一定の方法により現在価値を計算して評価する必要があります。

この評価方法を定めているのが、相続税法24条です。


相続税法24条の基本構造

相続税法24条では、定期金に関する権利について、いくつかの評価方法が規定されています。

主な方法は次の3つです。

1 解約返戻金相当額
2 一時金相当額
3 年金の現在価値

このうち、どの方法を採用するかは、その制度の内容によって決まります。

例えば、生命保険会社の個人年金のように解約返戻金がある場合には、その金額が評価額となる場合があります。
また、一時金として受け取る選択肢がある制度では、一時金相当額が基準となることがあります。

これらが存在しない場合には、将来の年金給付を現在価値に割り引いて評価する方法が用いられます。


年金の現在価値による評価

今回の裁判例でも採用されたのが、この現在価値による評価方法です。

基本的な計算は次のような考え方になります。

評価額 = 年間給付額 × 年金現価係数

この年金現価係数は、

・平均余命
・予定利率

などを前提として算出されます。

つまり、

将来受け取る年金を
「現在の価値に換算した金額」

として評価するという仕組みです。


平均余命の考え方

年金の現在価値を計算する際に重要となるのが、受給者の平均余命です。

相続税の実務では、

完全生命表

と呼ばれる統計資料が用いられます。

これは厚生労働省が公表している人口統計であり、年齢ごとの平均余命が示されています。

例えば、

65歳女性の平均余命は約24年

とされています。

つまり、平均的には約24年間年金が支給されると仮定して計算することになります。


予定利率の役割

もう一つ重要なのが予定利率です。

予定利率とは、

将来のお金を現在価値に割り引く際の利率

のことです。

一般的に、将来受け取るお金は現在の価値より低く評価されます。
これは、資金を運用すれば利息が得られるためです。

相続税法の評価では、制度の性格に応じて一定の利率を前提として計算します。

今回の裁判例では、

米国社会保障年金信託基金の実効金利
2.6%

が用いられました。


米国遺族年金の評価事例

東京地裁の事件では、米国遺族年金の受給権について次の前提が用いられました。

年間受給額
約203万円

平均余命
24年

予定利率
2.6%

これらの数値を用いて計算した結果、

評価額は約3,594万円

と算定されています。

つまり、年間200万円程度の年金であっても、長期間受給する前提となれば、相続財産としては数千万円規模の評価額になる可能性があるということです。


実務上の注意点

定期金の評価では、いくつか注意すべきポイントがあります。

まず、制度の内容を正確に把握することです。

特に次の点は重要になります。

・一時金受取の選択肢の有無
・解約返戻金の有無
・年金受給期間
・受給条件

これらの内容によって、評価方法そのものが変わる可能性があります。

また、国外制度の場合には、制度内容の確認自体が難しいことも多く、翻訳資料や制度解説を基に慎重に検討する必要があります。


結論

定期金に関する権利は、相続税の実務において重要な論点の一つです。
相続税法24条では、将来の年金給付を現在価値に換算する仕組みが設けられており、平均余命や予定利率を前提として評価が行われます。

今回の米国遺族年金の裁判例でも、この評価方法が採用され、数千万円規模の相続財産として認定されました。

海外勤務者や国際的な年金制度の利用が増える中で、国外年金の受給権が相続税の課税対象となるケースは今後さらに増える可能性があります。
相続実務では、制度の内容と税法上の評価方法を正確に理解することが重要になります。


参考

税のしるべ
2026年3月6日
米国遺族年金の受給権は相続税の課税財産、東京地裁で納税者敗訴の判決

国税庁
相続税法24条関係通達

厚生労働省
完全生命表

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