大手証券の仮想通貨参入が示す制度転換― ETF解禁と金融商品化のインパクト ―

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暗号資産を取り巻く環境が、いま大きく変わろうとしています。

これまで一部の専門業者や海外市場が中心だった仮想通貨ビジネスに、日本の大手証券会社が本格的に参入する動きが広がっています。背景にあるのは、法改正の方向性と、将来的なETF解禁への期待です。

本稿では、大手証券の戦略の意味と、日本の金融市場に与える構造的な影響を整理します。


法改正がもたらす制度的な位置づけの変化

金融庁は、暗号資産を金融商品取引法の枠組みに位置づける法改正を検討しています。これが実現すれば、銀行グループ傘下企業などでも投資目的での保有や売買が可能となる見通しです。

暗号資産はこれまで「資金決済法」の枠組みで整理されてきましたが、金融商品としての位置づけが明確になれば、証券ビジネスとの接続が一気に進みます。

制度の明確化は、機関投資家の参入条件を整えることを意味します。価格変動の大きさゆえに慎重姿勢をとってきた金融機関にとって、「規制の下で取り扱える」ことは極めて重要です。


野村ホールディングスの戦略

野村系では、スイス拠点の子会社を通じて暗号資産交換業への参入申請を予定しています。主な顧客は機関投資家や事業会社であり、市場に流動性を供給するマーケットメイク機能も視野に入れていると報じられています。

さらに、グループの運用会社による仮想通貨ETFの開発も検討されています。交換業、アセットマネジメント、カストディーといった機能を横断的に整備することで、グループ全体で収益機会を取り込む体制を構築しようとしています。

一方で、市況悪化に伴い関連取引で損失を計上したことも公表されています。これは、成長機会と同時に高い価格変動リスクを内包する分野であることを改めて示しています。


大和証券グループ本社とSMBC日興証券の動き

大和証券グループ本社も暗号資産交換業への参入を内部で議論しているとされています。フィンテック子会社を通じ、仮想通貨を担保としたローンを富裕層向けに展開するなど、既存顧客基盤との接続を図っています。

SMBC日興証券は仮想通貨関連の新規事業を担う部署を新設し、交換業参入やETF販売に向けた準備を進めています。

各社に共通しているのは、「ETF解禁」を前提とした布石である点です。


ETF解禁が意味する市場構造の変化

仮想通貨ETFが国内で解禁されれば、暗号資産は証券口座を通じて売買できる商品となります。

これは投資家心理に大きな影響を与えます。ウォレット管理や秘密鍵の保管といった技術的ハードルがなくなり、既存の証券インフラで取引できるようになるためです。

その結果、個人投資家のみならず、年金基金や機関投資家の資金が流入する可能性もあります。

もっとも、ETF化は価格変動を株式市場と結びつける可能性もあります。分散投資の一環として組み込まれる一方で、市場全体のボラティリティを高める要因となる可能性も否定できません。


リスク管理という本質的課題

暗号資産は依然として価格変動が大きく、流動性や規制変更リスクも存在します。

金融機関が本格参入するということは、

・自己勘定リスクの管理
・顧客資産の分別管理
・カストディー体制の強化
・市場急変時の損失吸収能力

など、多層的な管理体制が求められることを意味します。

「攻勢」という言葉の裏側には、厳格な内部管理体制の構築という地道な作業が存在します。


結論

大手証券の仮想通貨参入は、単なる新商品拡大ではありません。

それは、

法制度の再整理
ETF解禁という商品インフラの整備
機関投資家資金の本格流入

という三層の変化が重なった結果です。

金融がデジタル資産を本格的に包摂する段階に入るのか、それとも価格変動リスクが拡大の制約となるのか。

今後数年は、日本の金融制度にとって重要な転換期となる可能性があります。


参考

日本経済新聞(2026年2月17日朝刊)
「大手証券、仮想通貨で攻勢 法改正追い風」

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