外国人の土地取得規制は世界でどう違うのか ― 各国制度の比較から見える日本の立ち位置

人生100年時代

外国人による土地取得をめぐる議論では、「海外では厳しく規制している」というイメージがしばしば語られます。

しかし実際には、各国の制度は一様ではありません。安全保障、住宅政策、投資誘致など、それぞれの政策目的に応じて、多様な制度設計がなされています。

本稿では、主要国の制度を比較しながら、日本の制度の特徴と今後の方向性を整理します。


各国の基本スタンスは大きく3類型に分かれる

外国人の土地取得規制は、大きく次の3つに分類できます。

第一は「原則自由型」です。外国人にも自国民と同様の取得を認めるタイプで、日本はこの類型に属します。

第二は「許可制・届出型」です。一定の条件のもとで政府の審査や届出を必要とする制度です。

第三は「用途・地域限定型」です。農地や国境付近など、特定の土地に限って取得を制限する方式です。

多くの国は、これらを組み合わせた複合型の制度を採用しています。


米国:安全保障を軸にした選別型規制

米国は、基本的には外国人の不動産取得を広く認めています。

ただし、安全保障に関わる分野では厳格な審査が行われます。外国投資委員会(CFIUS)が、軍事施設周辺や重要インフラに関係する不動産取引を審査し、場合によっては取引の中止や売却命令が出されます。

また近年では、中国資本による農地取得への懸念から、州レベルで規制強化の動きも広がっています。

米国の特徴は、「取得そのものは自由だが、リスクの高い案件は個別に排除する」という点にあります。


中国:原則制限と利用目的の厳格管理

中国では、外国人による土地取得は厳しく制限されています。

そもそも中国では土地は国家または集団の所有とされ、外国人は土地使用権の取得に限られます。さらに、居住目的などに限定されるなど、利用目的にも厳格な制約があります。

このように、中国は土地制度そのものが国家管理のもとにあり、外国人規制もその延長線上に位置づけられています。


オーストラリア:住宅市場保護を目的とした許可制

オーストラリアは、外国人による不動産取得に対して比較的厳格な許可制を採用しています。

外国投資審査委員会(FIRB)の承認が必要であり、特に中古住宅の取得には強い制限があります。これは、国内の住宅価格の高騰を抑制する目的が背景にあります。

一方で、新築住宅への投資はむしろ促進されるなど、政策目的に応じた誘導が行われています。


欧州:内外人平等を維持しつつ限定的規制

欧州諸国の多くは、EUの枠組みもあり、基本的には内外人平等の原則を維持しています。

ただし、安全保障や農地保護の観点から、特定の地域や用途に限定した規制が存在します。例えば、農地取得に許可を要する国や、国境地域での規制を設ける国もあります。

欧州の特徴は、「自由を原則としつつ、必要な部分だけ限定的に規制する」点にあります。


各国比較から見える3つの視点

各国制度を比較すると、次の3つの視点が浮かび上がります。

第一に、「取得」と「利用」を分けて考えている点です。多くの国では、取得そのものよりも利用や安全保障上の影響に着目しています。

第二に、「一律規制ではなく選別型」である点です。問題のあるケースに限定して対応する仕組みが主流です。

第三に、「政策目的が明確」である点です。安全保障なのか、住宅政策なのか、投資誘致なのかによって制度設計が異なります。


日本の制度の特徴と位置づけ

日本は、国際的に見ても「最も自由度が高い国の一つ」です。

内外人平等原則を維持し、取得段階での規制はほとんど設けていません。その一方で、重要土地等調査法により、利用段階での対応を強化しています。

この構造は、欧州型に近いものの、取得段階の自由度という点ではそれ以上に開放的ともいえます。


今後の制度設計に必要な視点

今後、日本が制度を見直す場合には、各国のように「目的に応じた設計」が不可欠です。

例えば、安全保障であれば重要施設周辺の監視強化、住宅政策であれば投資の誘導や抑制といったように、目的ごとに異なる手段を講じる必要があります。

単に「外国人だから規制する」という発想では、実効性も国際的整合性も確保できません。


結論

外国人の土地取得規制は、各国で大きく異なる制度が採られています。

しかし共通しているのは、
・取得と利用を分けて考えること
・一律ではなく選別的に対応すること
・政策目的を明確にすること

という点です。

日本に求められるのは、海外の制度を表面的に模倣することではなく、自国の法原則と政策目的に即した制度設計です。

その意味で、実態把握と制度の精緻化を積み重ねていく現在の方向性は、国際的にも整合的なアプローチといえます。


参考

・日本経済新聞「高市政権の外国人政策(下) 土地取得規制 まず実態把握」2026年3月18日
・米国財務省 外国投資委員会(CFIUS)関連資料
・オーストラリア政府 外国投資審査委員会(FIRB)資料
・欧州委員会 外国投資規制に関する資料

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