REIT市場を語る際、価格や利回りに注目が集まりがちですが、実は「誰が売り、誰が買っているのか」という需給構造が、相場を左右する重要な要素となっています。
とりわけ近年、存在感を増しているのが地方銀行(地銀)です。金利上昇局面において、地銀とREITの関係はどのように変化しているのでしょうか。本稿では、その構造を整理します。
地銀はなぜREITを保有してきたのか
長らく日本は超低金利環境にありました。貸出金利は低く、国債利回りも抑えられていました。こうした中、地銀は運用収益の確保に苦慮してきました。
そこで注目されたのがREITです。
REITは相対的に高い分配金利回りを持ち、国内資産であり、価格変動も株式ほど大きくないと認識されてきました。特に利回りが4%前後あれば、国債や預金と比べて魅力的な運用先となります。
その結果、地銀はポートフォリオの一部としてREITを組み入れてきました。
金利上昇がもたらす二重の影響
しかし、金利上昇局面では状況が変わります。
第一に、保有国債の含み損問題です。金利が上昇すると、既発国債価格は下落します。地銀は評価損への対応を迫られます。
第二に、ポートフォリオ再構築の動きです。金利が上昇すれば、新発国債の利回りが上昇します。リスクを取らずに一定の利回りを確保できる環境が整うため、REITの相対的な魅力は低下します。
決算期末に向けて、含み益のある株式やREITを売却し、評価損を相殺する動きが出やすい点も、需給面の重荷になります。
海外投資家との対比
需給構造を考える際、海外投資家の動きも重要です。
海外勢は、同じ不動産関連でも、デベロッパー株を買い、REITを売る傾向を強めています。開発利益や資産売却益を取り込めるデベロッパーの方が、金利上昇局面では柔軟性があると評価されているためです。
この結果、REIT市場は「海外売り・国内(地銀・個人)買い」という構図になりやすい状況が生まれています。
地銀は下支え役になれるのか
一方で、REITの分配金利回りが4%台を維持している局面では、地銀にとって依然として魅力的な水準でもあります。
価格が下落すれば、利回りは上昇します。その結果、一定水準以下では買いが入りやすくなります。
つまり、地銀は売り手にもなり得ますが、同時に「価格下落時の受け皿」にもなり得る存在です。
ただし、その余力は各行の財務状況に左右されます。国債評価損の規模、自己資本比率、リスク管理方針などにより、行動は一様ではありません。
個人投資家が注目すべきポイント
REIT投資を検討する個人投資家は、次の点に留意すべきです。
・地銀の決算期(3月・9月)前後の需給変動
・金利動向とREIT利回りのスプレッド
・海外投資家の売買動向
REITは不動産価格だけでなく、金融機関のバランスシート事情にも影響される商品です。
結論
地銀とREITの関係は、超低金利時代に形成された「利回り確保のパートナーシップ」とも言えます。
しかし、金利上昇局面ではその関係は変化します。売却圧力が強まる一方、利回り水準によっては買い手にもなるという、二面性を持っています。
REIT市場は、不動産市況だけでなく、金利、国債市場、金融機関の財務戦略と密接に結びついています。
今後の相場を考えるうえで、需給構造という視点は欠かせません。価格の背後で動く資金の流れを読むことが、REIT投資の精度を高める鍵となります。
参考
日本経済新聞 2026年2月20日朝刊
ポジション 不動産熱、乗れぬREIT
東京証券取引所 投資部門別売買動向資料
各地方銀行決算説明資料

