基準地価上昇と暮らし・資産戦略(第2回)
2025年の基準地価は全国平均で1.5%上昇し、4年連続のプラスとなりました。
第1回では「全体像」と「東京圏のけん引力」を紹介しましたが、今回は東京以外の主要都市圏や地方中核都市の動きを掘り下げます。
大阪圏・名古屋圏・地方4市は、それぞれ地価上昇の背景や持続力に違いがあります。この「温度差」を知ることは、不動産市場の今後を見通す上で大切です。
1. 大阪圏 ― 再開発・万博・IRが追い風
大阪圏の地価は前年の2.9%上昇から、2025年は3.4%上昇へと加速しました。東京圏には及ばないものの、関西経済の底力を感じさせる結果です。
大型再開発の効果
- グラングリーン大阪(大阪駅北口の再開発エリア)が2024年に開業。
- 商業施設やオフィス、ホテルが集積し、周辺地価を押し上げています。
万博・IRへの期待
- 大阪・関西万博(2025年開催)は観光需要を刺激。
- 統合型リゾート(IR)整備計画も進行中で、長期的な地価上昇の材料に。
こうした大型イベントや都市機能強化の動きは、海外投資家にも注目されています。
2. 名古屋圏 ― 自動車産業依存の影響
一方で名古屋圏は、前年の2.9%上昇から2025年は2.1%上昇へと伸びが鈍化しました。
背景
- トヨタ自動車を中心とする製造業依存が大きく、景気変動の影響を受けやすい。
- インバウンド需要や再開発の規模では、大阪や福岡に劣る。
堅実ではあるものの、他都市圏のような勢いに欠けるのが現状です。名古屋エリアで不動産購入を検討する人にとっては、価格上昇が比較的緩やかであることが、むしろ安心材料となるかもしれません。
3. 地方4市 ― 札幌・仙台・広島・福岡の動き
地方の中核都市である「札幌・仙台・広島・福岡」では、地価が高めの上昇を続けています。2024年は6.8%上昇でしたが、2025年は5.3%上昇とやや鈍化しました。
札幌市
- 北海道新幹線延伸への期待、観光需要増が下支え。
- ただし過去数年の急伸の反動で、伸び率は落ち着きつつある。
仙台市
- 東北の経済・行政の中心として安定した需要。
- 医療・教育機関の集積があり、住宅地も堅調。
広島市
- 広島駅ビルの再開発が地価上昇をけん引。
- 商業地の伸びが加速し、地域経済活性化の象徴に。
福岡市
- 天神ビッグバンと呼ばれる中心部再開発が進行。
- 商業地は10.2%上昇と依然として高い伸び。
- ただし前年の13.2%上昇からは小幅に鈍化。
福岡は特にアジアに近い地理的特性から、海外資金流入やインバウンド需要の影響を強く受けやすい都市です。
4. 都市ごとの「温度差」が示すこと
大阪・名古屋・地方4市の動向から見えてくるのは、都市ごとに異なる成長シナリオです。
- 大阪:再開発とイベントで上昇余地あり
- 名古屋:産業依存で伸びは鈍化、安定型
- 札幌・仙台:観光・行政需要で底堅い
- 広島:再開発が地価を押し上げる典型例
- 福岡:アジアゲートウェイとしての成長期待大
都市の個性や政策によって地価の伸び方が変わるのは、地方分散化を考える上でも重要なポイントです。
5. 生活者・投資家への示唆
こうした動きは私たちの暮らしや資産形成にも影響を及ぼします。
- 住宅購入
東京圏に比べれば地方都市は購入しやすい水準。ただし再開発地区では急騰のリスクも。 - 相続・税負担
福岡や広島などで地価が大きく上がれば、路線価や相続税評価額も増える可能性。地方だから安心とは限りません。 - 投資先の選択
都市ごとの温度差を理解し、「どこで物件を持つか」によって将来のリターンが大きく変わります。
FP・税理士として強調したいのは、「地価上昇=一律にプラス」ではなく、都市ごとの特徴を踏まえて判断することが大切だという点です。
まとめ
2025年基準地価における「東京以外」の動きを振り返ると、
- 大阪は再開発・万博効果で勢いを増す
- 名古屋は伸び鈍化で安定感
- 地方4市は依然高水準ながら地域差が鮮明
という温度差が見えてきました。
都市の性格や政策が地価に直結することを理解することが、今後の不動産購入や資産形成の判断材料となります。
次回(第3回)は、「地価上昇と日本経済 ― インフレ・GDPとの連動」をテーマに、マクロ経済と不動産市場のつながりを解説します。
📖 参考
日本経済新聞「基準地価4年連続上昇 東京けん引、海外マネー流入」
2025年9月17日付・総合2面
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
