地方財政の硬直化が加速しています。
2026年度の都道府県当初予算案では、人件費や扶助費などの義務的経費が前年度から約1.1兆円増加しました。一方で地方税収の増加は約9000億円にとどまり、固定費の伸びを補えない構造が明確になっています。
税収は増えているのに、財政余力は縮小している。この現象は一時的な景気循環の問題ではなく、制度的・構造的な問題を内包しています。本稿では、都道府県財政の現状を整理し、今後の政策設計の論点を考察します。
税収増でも余裕が生まれない理由
2026年度の地方税収は増加見込みです。特に法人事業税・法人住民税、いわゆる「法人二税」が企業業績の回復を背景に伸びています。
しかし、その増収の多くは東京都に集中しています。増収額の過半を東京都が占める構造は、地方税収の偏在を改めて浮き彫りにしています。
一方で、歳出は全国的に拡大しています。
主な増加要因は以下のとおりです。
・職員給与の引き上げによる人件費増
・高齢化に伴う社会保障費(扶助費)の増加
・公債費の上昇
これらはいずれも「義務的経費」に分類され、自治体の裁量で簡単に削減できるものではありません。結果として、税収増があっても財政の自由度は広がらないという状況が生じています。
財政調整基金の取り崩しという警告
財政調整基金の取り崩しが相次いでいます。
財政調整基金は、景気変動や災害などに備える「緩衝材」の役割を担います。本来は例外的に使うべき資金ですが、多くの都道府県が当初予算段階から活用せざるを得ない状況にあります。
これは単なる赤字補填ではなく、構造的な収支ギャップの表れです。
基金残高が減少すれば、将来の危機対応力は低下します。財政の弾力性が失われることは、行政サービスの持続可能性に直結します。
東京都との格差問題
東京都は税収増で人件費増を十分吸収できる状況にあります。
しかし、多くの地方自治体ではそうはいきません。法人税収の偏在は、産業集積と人口集中の結果でもありますが、地方財政制度の持続可能性という観点では再検討が必要な局面に入っています。
地方交付税や税源配分の在り方、さらには地方消費税の扱いなど、制度設計そのものが問われる段階に来ています。
消費税減税がもたらす影響
仮に食品消費税の減税が実施されれば、地方財政への影響は避けられません。
消費税収は国と地方の重要な基幹財源です。減税は家計支援としての政策効果が期待される一方で、地方財源の減少を伴います。
地方財政がすでに硬直化している状況で減税を行う場合、代替財源の確保が不可欠です。さもなければ、行政サービスの質や量に影響が及ぶ可能性があります。
歳出抑制だけで解決できるのか
識者の多くは「歳出抑制が鍵」と指摘します。
確かに事業の総点検、共同調達、デジタル化による効率化などは重要です。実際に一部の自治体では事業見直しやシステム共同化によるコスト削減が進んでいます。
しかし、問題の本質は義務的経費の増加にあります。
人口減少と高齢化が進む限り、社会保障費は構造的に増加します。人材確保競争が激化するなかで公務員給与を抑制し続けることも現実的ではありません。
つまり、単なる削減努力ではなく、
・行政サービスの優先順位付け
・広域連携の拡大
・デジタル化による業務再設計
・成長戦略と税収基盤の強化
といった「再設計」の視点が不可欠です。
地方財政は「配分」から「設計」へ
地方財政はこれまで「配分」の議論が中心でした。
しかし、今後は「設計」の議論に移行する必要があります。
限られた財源をどう分けるかではなく、
・どのサービスを持続可能とするか
・どこまでを自治体の責任範囲とするか
・地域経済の成長と財政をどう接続するか
という問いに向き合う段階に入っています。
財政硬直化は危機であると同時に、制度再設計の契機でもあります。
結論
都道府県財政の硬直化は一過性の現象ではありません。
義務的経費の増加、税収の地域偏在、基金取り崩しの常態化、そして減税議論。これらはすべて、地方財政制度が転換点にあることを示しています。
今後求められるのは、単なる歳出削減ではなく、制度全体を再設計する視点です。
地方自治体が持続可能な行政運営を続けるためには、財源配分、成長政策、社会保障制度を横断した議論が不可欠です。
地方財政は、いま「硬直化」から「再構築」への岐路に立っています。
参考
日本経済新聞
「都道府県、進む財政硬直化 『削れぬ経費』1.1兆円増」
2026年2月27日 朝刊

