地方税収の偏在と「自主財源」 ― 税の公平と地域の自立

政策
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インターネット銀行の利子課税をめぐる議論は、単に税の技術的問題にとどまりません。その背景には、長年指摘されてきた地方税収の偏在という構造的な課題があります。
地方自治体が安定した行政サービスを提供するためには、自主財源の確保が欠かせません。しかし、経済活動が首都圏に集中する中で、地方は税収の減少と交付税依存の増加に直面しています。
税の公平性と地方の自立性をどう両立させるか――。国と地方の財政関係を見直す時期に来ています。

1.地方税収の偏在構造

地方自治体の歳入は「自主財源」と「依存財源」に大別されます。
自主財源とは、地方税や使用料など自らの権限で得る収入であり、自治体の政策判断の自由度を高めます。一方、依存財源とは国からの地方交付税や補助金を指し、国の政策方針や財政事情に左右されやすい構造です。

現在、都道府県税収の約4割が東京都に集中しており、とりわけ法人事業税・利子割・株式譲渡所得割など、経済活動に密接に関わる税目ほど地域格差が大きくなっています。企業本社や金融機関が東京に集積する結果、地方に居住する人々の所得や利子も、税収面では「東京発」に計上されてしまう構造が続いています。

2.「清算制度」は応急処置か

総務省が検討する清算制度は、こうした偏在を是正する一手として注目されています。
具体的には、課税所得や預貯金残高などの指標を基に、都道府県間で利子税収を再配分する仕組みです。しかし、制度の公平性やデータ精度への懸念から、導入には慎重な意見も多く出ています。

清算制度は短期的な調整策として有効ですが、長期的には根本的な税源移譲を検討する必要があります。
現行制度では、地方の経済実態に比べて財源配分が硬直的で、地域の創意工夫が財政面で十分に報われない構造が残っています。

地方が自らの判断で課税・施策を展開できる環境を整えることが、真の「地方分権」につながります。

3.地方交付税の役割と限界

地方交付税は、財源の乏しい自治体に対して国が配分する「財政調整制度」です。全国の自治体が一定の行政サービスを維持できるようにする仕組みであり、偏在是正の柱とされています。
しかし、交付税の原資は国税からの法定率(所得税・法人税・酒税などの一定割合)によって賄われており、国の財政状況が悪化すれば地方にも波及します。

また、交付税への依存が高まるほど、地方の財政運営は中央集権的になりやすく、自治体の政策判断が制約される傾向があります。結果として、地方の「自立財源比率」は伸び悩み、税制上の改革を進めても効果が限定されるというジレンマが生まれています。

4.都市と地方のバランスをどう取るか

都市への一極集中は、経済効率を高める一方で、地域間の格差を拡大させます。税制面でも、人口減少が進む地方では税収基盤が脆弱化し、社会保障・インフラ維持費が増加するという逆風が吹いています。

この格差を是正するためには、単なる「分け合い」ではなく、地域の稼ぐ力を支える税制構造が必要です。
たとえば、地方のスタートアップ支援や地域再投資を促すための地方版租税特別措置(ローカル・インセンティブ税制)や、環境・観光・デジタル分野に特化した目的税の活用などが挙げられます。

国は財政制度を通じて地域格差を調整しつつ、地方が主体的に経済活性化を進められる仕組みを整える必要があります。

結論

税収の偏在は、単に数字の不均衡ではなく、地方自治の根幹を揺るがす課題です。
清算制度による調整は出発点にすぎず、最終的には地方の自立財源を拡充する方向へ舵を切ることが不可欠です。

人口減少時代において、地域の持続可能性を左右するのは「どれだけ国に頼らずに財源を確保できるか」です。
地方税制度の見直しは、自治体が独自の政策を打ち出し、地域経済を再生させるための第一歩になるでしょう。


出典

・総務省「地方税制度調査会 資料」(2025年)
・地方財政審議会「地方税収の偏在と財政調整制度」
・日本経済新聞「東京偏在の利子税収見直し」「再配分、ハイブリッド型で」(2025年10月31日)
・財務省「地方交付税制度の概要」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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