日本の税制には、多くの「税負担軽減措置」が設けられています。
特に地方税では、地域経済の活性化や中小企業支援などの政策目的のために、様々な特例措置が導入されています。
しかし、こうした税制優遇は実際にどの程度利用されているのでしょうか。
総務省は毎年、地方税における税負担軽減措置等の適用状況を取りまとめて公表しています。
令和6年度の報告書では、241件に及ぶ措置の適用額が示され、その中には中小企業の設備投資を後押しする固定資産税の特例など、注目すべき制度も含まれています。
この記事では、令和6年度の適用状況から、地方税の税制優遇がどのように活用されているのかを整理していきます。
地方税の税負担軽減措置とは何か
地方税の税負担軽減措置とは、本来の税負担を政策目的に応じて軽減する制度です。
代表的なものとしては次のような措置があります。
- 固定資産税の特例
- 不動産取得税の課税標準の軽減
- 自動車関係税の軽減措置
- 企業投資促進のための税制優遇
これらの制度は、地方自治体の税収を減らすことになるため、その適用状況は毎年報告され、政策効果の検証材料として利用されています。
令和6年度の報告では、地方税の税負担軽減措置等は 合計241件に及び、それぞれの適用額が公表されました。
最も適用額が大きいのは宅地取得の特例
今回の報告で、適用額が最も大きかったのは次の制度です。
宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例
この制度は、不動産取得税の課税標準を 2分の1に軽減する措置です。
令和6年度の適用総額は
約8兆2900億円
に達しました。
これは地方税の税制優遇の中でも非常に大きな規模であり、日本の不動産取得に関する税制が強く軽減されていることを示しています。
住宅取得や土地取引を促進する目的で長く続いている制度ですが、税収規模から見ても、地方税の特例の中核的な存在と言えるでしょう。
中小企業設備投資を支援する固定資産税特例
今回の報告で注目されるのが、令和5年度税制改正で導入された次の制度です。
中小企業等経営強化法に基づく固定資産税の課税標準特例
これは、中小企業が生産性向上のための設備投資を行った場合に固定資産税を軽減する制度です。
対象となる設備は、例えば次のようなものです。
- 機械装置
- 測定工具
- 器具備品
- 建物附属設備
令和6年度は、この制度が初めて本格的に適用された年度となりました。
その適用総額は
約1685億円
となっています。
これは地方税の特例としては比較的大きな規模であり、中小企業の設備投資促進策として一定の利用があったことが分かります。
賃上げと連動する制度への見直し
この固定資産税特例は、令和7年度税制改正で制度内容が見直されています。
改正前の制度では、賃上げ方針の表明がなくても適用が可能でした。
しかし、改正後は 賃上げを前提とする制度へと変更されています。
具体的には次の仕組みです。
給与を1.5%以上引き上げる方針
- 課税標準を 2分の1に軽減
- 適用期間 3年間
給与を3%以上引き上げる方針
- 課税標準を 4分の1に軽減
- 適用期間 5年間
つまり、単なる設備投資支援から
賃上げと投資を同時に促す税制
へと政策の方向が変更されたことになります。
これは近年の税制に共通する特徴でもあります。
税制優遇の実態を数字で見る意味
税制優遇は政策として導入される一方で、次のような問題も指摘されています。
- 制度が多すぎて分かりにくい
- 本当に政策効果があるのか不明確
- 税収減の規模が見えにくい
そのため政府は、税制優遇の適用額を定期的に公表し、透明性を確保する取り組みを進めています。
今回の報告でも
- 地方税の税負担軽減措置 241件
- 不動産取得税特例 約8兆円規模
- 中小企業設備投資特例 約1685億円
といった具体的な数字が示されました。
これにより、税制優遇がどの分野に集中しているのかを把握することができます。
結論
令和6年度の地方税の税負担軽減措置の適用状況を見ると、税制優遇は非常に大きな規模で利用されていることが分かります。
特に
- 不動産取得税の特例は 8兆円超の規模
- 中小企業設備投資支援の固定資産税特例も 1685億円
と、政策税制として一定の影響力を持っています。
また、最近の制度改正では、単なる減税ではなく
設備投資・賃上げ・成長戦略を連動させる税制
へと方向が変わりつつあります。
税制優遇は単なる減税措置ではなく、政策目的を実現するための重要な手段です。
今後も、その適用状況を継続的に確認していくことが、税制の実態を理解する上で重要になるでしょう。
参考
総務省 地方税における税負担軽減措置等の適用状況に関する報告書(令和6年度)
税のしるべ 2026年3月9日号
