地方交付税制度は抜本改革が必要か――「調整できるはず」が揺らぐ理由と、現実的な見直しの方向性 ―

税理士
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都市と地方の税収格差が拡大するなか、地方交付税制度の役割が改めて問われています。

地方交付税は、どの地域に住んでいても一定水準の行政サービスが受けられるようにするための基幹制度です。本来であれば、税収の偏在があっても交付税で調整され、格差は是正されるはずです。

しかし近年は「交付税だけでは十分に調整できない」という状況が目立っています。本稿では、地方交付税制度の構造的課題と、抜本改革の必要性について整理します。


地方交付税の本来の役割

地方財政を考える際には、次の三段階が重要です。

第一に、標準的な行政サービスに必要な財政需要を算定すること。
第二に、各自治体の課税力を把握すること。
第三に、両者の差を財政調整によって埋めること。

地方交付税は、この第三段階を担う制度です。基準財政需要額に対して基準財政収入額が不足する部分を補うことで、地方間の財政力格差を是正します。

理論上は、これで格差は調整されるはずです。


なぜ調整が難しくなっているのか

1 不交付団体への対応の限界

税収が大きく伸びる自治体は、不交付団体となる場合があります。不交付団体には交付税による調整が及びません。

税収増加が続くと、不交付団体の財政余力はそのまま積み上がります。結果として、制度上は調整されない「財源超過」が拡大します。

2 税源の偏在の拡大

法人課税の偏在が強まっています。企業の本社所在地に税収が集中する一方、実際の経済活動は全国に広がっています。

デジタル化やフランチャイズ展開により、活動地と納税地の乖離が拡大しました。交付税は事後的な調整制度であるため、こうした構造的偏在を十分に吸収しきれません。

3 制度の複雑化と納得感の低下

交付税算定は精緻化が進む一方、制度が非常に複雑になっています。

自治体が税収を増やしても交付税が減るという構造は、「努力が報われにくい」という印象を与えます。財源保障とインセンティブの両立が難しくなっています。


抜本改革は必要か

全面的な制度解体や再構築は、短期的には現実的ではありません。交付税は地方行政の安定運営に不可欠だからです。

しかし、制度の目的を再整理したうえでの構造的見直しは必要です。

抜本改革の方向性として、次の三点が重要です。

1 交付税「前段階」の強化

交付税だけで格差を調整するのではなく、税源配分そのものを見直す必要があります。

偏在の大きい法人課税について、分割基準の見直しや譲与税の拡充により、税収帰属の適正化を図ることが重要です。

2 税収増局面で格差が拡大しにくい設計

景気拡大局面で都市部の税収が急増すると、格差が一気に広がります。

留保財源や算入方法を含め、格差が過度に拡大しない仕組みを再設計する必要があります。

3 地方の関与と透明性の確保

配分基準は政治的合意の問題でもあります。

算定過程の透明性を高め、地方側が実質的に関与できる仕組みを整えることが、制度の正当性を支えます。


制度の再定義が求められている

地方交付税は「最後の調整装置」として機能すべき制度です。

しかし現実には、税源配分の偏在是正と財源保障の双方を背負い込み、調整機能が限界に近づいています。

今後は、

・税源配分の見直し
・交付税の役割の明確化
・財源保障と自治体努力のバランス再設計

という三位一体の見直しが必要です。


結論

地方交付税制度は、全面的な作り直しが必要という段階ではありません。

しかし、税源偏在の拡大や不交付団体の増加という現実を踏まえると、現行制度のままでは格差是正に限界があります。

交付税を守るためにも、税源配分の強化と算定構造の見直しを含む構造的改革が不可欠です。

都市と地方の対立という構図ではなく、地方自治と連帯をどう両立させるかという視点から、制度を再定義することが求められています。


参考

・日本経済新聞「都市と地方の税収格差(上) 地方交付税では是正困難に」2026年2月16日朝刊
・財務省 財政制度等審議会資料「地方財政の現状と課題」2025年11月5日
・財務省「令和7年度地方財政計画の概要」2025年12月2日
・国立国会図書館『レファレンス』第656号「地方交付税制度の問題点と改革論」2005年9月

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