在職老齢年金は廃止されるのか ― 制度見直しの議論

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高齢期まで働く人が増えるなかで、年金制度の中でも特に議論の対象になっているのが在職老齢年金です。
在職老齢年金は、年金を受給しながら働く場合に、賃金と年金の合計額によって年金の一部が支給停止される仕組みです。

この制度は長く続いてきましたが、近年では見直しや廃止の議論が繰り返し行われています。
背景にあるのは、日本社会における高齢期就労の拡大です。

本稿では、在職老齢年金制度の仕組みと、廃止議論の背景を整理します。


在職老齢年金の基本的な仕組み

在職老齢年金は、厚生年金を受給している人が会社などで働く場合に適用される制度です。

制度の基本構造は次の通りです。

  • 年金額(基本月額)
  • 給与(総報酬月額相当額)

この二つの合計が一定の基準額を超える場合、年金の一部が支給停止になります。

現在の制度では、この基準額は

月50万円

とされています。

例えば、

  • 年金月額:15万円
  • 給与月額:40万円

の場合、合計額は55万円となり、基準額を超えるため一部の年金が調整されます。

ただし、全額停止になるわけではなく、超過部分の一定割合が停止される仕組みです。


制度の目的

在職老齢年金は、年金制度の公平性を確保するために設けられました。

年金制度は、現役世代が保険料を負担し、引退後の生活を支える仕組みです。

しかし、

  • 高い給与を得ている
  • それでも年金を満額受給する

という状況になると、制度の公平性に疑問が生じます。

そのため、一定以上の収入がある場合には年金額を調整する仕組みが導入されました。


廃止論が出ている理由

近年、在職老齢年金の見直しや廃止を求める意見が増えています。

その主な理由は、高齢期就労への影響です。

在職老齢年金は、給与が増えると年金が減る仕組みであるため、

  • 労働時間を減らす
  • 就労を控える

といった行動を誘発する可能性があります。

このため、制度が

高齢者の就労意欲を抑制している

という指摘があります。

人口減少による人手不足が深刻化するなかで、高齢者の労働参加を促す政策が求められているため、この制度の見直しが議論されています。


段階的な制度見直し

政府はすでに制度の見直しを進めています。

例えば2022年には、在職老齢年金の基準額が

47万円 → 50万円

に引き上げられました。

これは、高齢者が働きやすい環境を整えるための措置です。

また、65歳未満の在職老齢年金については、過去にも制度の見直しが行われてきました。

このように、制度は段階的に緩和されています。


完全廃止の議論

政策議論の中では、在職老齢年金を完全に廃止する案も検討されています。

廃止論の主な根拠は次の通りです。

  • 高齢者の就労促進
  • 労働力不足への対応
  • 制度の簡素化

特に、70歳まで働く社会が現実になりつつある現在では、働きながら年金を受け取ることが一般的になる可能性があります。

その場合、在職老齢年金の存在意義が薄れるという指摘もあります。


廃止に慎重な意見

一方で、制度の廃止に慎重な意見もあります。

主な理由は、制度の公平性です。

在職老齢年金が廃止されると、

  • 高収入の高齢者
  • 低所得の高齢者

の間で給付格差が広がる可能性があります。

また、制度を廃止すると年金給付総額が増えるため、年金財政への影響も考慮する必要があります。

そのため、制度の見直しは慎重に進められています。


今後の制度の方向性

在職老齢年金の議論は、高齢期就労の拡大と密接に関係しています。

今後の制度の方向性としては、

  • 基準額の引き上げ
  • 調整方法の見直し
  • 制度の簡素化

などが考えられます。

完全廃止の可能性も議論されていますが、年金財政や公平性の問題を考えると、段階的な見直しが続く可能性が高いと考えられます。


結論

在職老齢年金は、働きながら年金を受け取る場合の給付調整制度として長く続いてきました。

しかし、高齢期就労が一般化するなかで、

  • 就労意欲への影響
  • 制度の公平性
  • 年金財政

などの観点から、制度の見直しが議論されています。

今後の日本社会では、

働きながら年金を受け取る社会

がさらに広がると考えられます。

そのなかで、在職老齢年金制度のあり方は、今後の年金制度を考えるうえで重要なテーマとなるでしょう。


参考

日本経済新聞「70歳以降も働く」初の4割 郵政世論調査(2026年3月12日朝刊)

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