国内不動産投資6兆円時代をどう読むか

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2025年、日本の不動産投資額は6兆円を超え、統計開始以来の最高水準となりました。

低金利環境が続くなか、海外投資家の資金流入が加速し、大型取引が相次いでいます。不動産市場は再び活況を呈しているようにも見えますが、その内側では企業の資産戦略や金融環境の変化が複雑に絡み合っています。

本稿では、今回の投資拡大の背景と構造、そして今後の論点について整理します。


投資額6兆円超の意味

米系不動産サービス大手の集計によれば、2025年の国内不動産投資額は前年比13%増の約6.2兆円となりました。これは2007年の調査開始以降で過去最高です。

特筆すべきは、海外投資家による投資額が約2.1兆円と前年比で大幅に増加し、全体の約3分の1を占めた点です。

背景には以下の要因があります。

・相対的に低い日本の金利環境
・インフレ進行に伴う賃料上昇
・為替水準による円建て資産の割安感
・企業による資産効率改善の動き

単なる価格上昇局面というよりも、資本構造の再編が同時に進行している局面と見るべきでしょう。


企業のアセットライト戦略

象徴的なのは、日産自動車による横浜本社ビルの売却です。約970億円規模の取引となりました。

また、米投資会社のBlackstoneは、物流施設や大型複合ビルを相次いで取得しています。例えば「東京ガーデンテラス紀尾井町」はその代表例です。

企業側にとって不動産売却は、

・バランスシートの軽量化
・資本効率(ROE)改善
・借入圧縮
・事業投資原資の確保

といった目的があります。

不動産は「保有資産」から「運用対象」へと役割を変えつつあります。


なぜ海外勢が積極的なのか

海外ファンドが日本市場に向かう理由は明確です。

第一に、日本の長期金利は主要国と比べ依然として低水準です。
第二に、インフレ下で賃料上昇が見込める点。
第三に、為替面での相対的な割安感。

海外から見れば、日本は「安定的にキャッシュフローを生む市場」と映ります。

とくに物流施設、都心オフィス、ホテルといったアセットクラスが人気です。訪日観光の回復や都市再開発も追い風となっています。


本当にバブルなのか

投資額の過去最高更新という数字だけを見ると、過熱感を懸念する声も出てきます。

しかし現在の市場は、2000年代半ばの不動産バブルとは構造が異なります。

・金融機関の審査は厳格
・自己資本比率は相対的に高い
・REIT市場の透明性向上
・テナント需要は実需ベース

とはいえ、金利上昇局面に入れば、評価額や利回りは再調整される可能性があります。

今後の焦点は、日本銀行の金融政策と、海外金利とのスプレッドです。


個人投資家・中小企業経営者への示唆

今回の動きは、必ずしも大手ファンドだけの話ではありません。

・自社ビル保有の是非
・不動産の含み益活用
・相続対策としての不動産保有
・REIT投資の位置づけ

企業経営者や個人資産家にとっても、資産ポートフォリオの再点検を促す材料になります。

「持つこと」が最適か、「運用すること」が最適か。

低金利時代の常識は、少しずつ揺らいでいます。


結論

2025年の不動産投資額6兆円超は、日本経済の回復を象徴する数字であると同時に、資本の再編を映す鏡でもあります。

海外資金の流入は日本市場への信認を示しますが、金利動向次第で環境は一変します。

これからは、不動産を「所有する資産」ではなく、「資本効率を高める戦略資産」としてどう位置づけるかが問われます。

不動産市場の拡大はゴールではなく、次の再編の入口なのかもしれません。


参考

日本経済新聞
国内不動産への投資、最高 昨年6.2兆円
2026年2月19日朝刊

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