国の決算検査報告に学ぶ ― 税理士・FPが押さえるべき補助金・基金管理の実務ポイント

会計
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2024年度の国の決算について、会計検査院がまとめた検査報告では、官庁や政府出資法人による税金の無駄遣い・改善指摘が319件、総額540億円に上りました。医療福祉や中小企業支援など、私たち税理士・FPが実務で関わる分野も多く含まれています。
本稿では、この検査結果を踏まえ、補助金・基金管理の観点から実務上の留意点を整理します。

1. 補助金・基金の管理リスクを再確認

今回の報告では、東日本大震災被災企業向けの債務保証基金において、203億円もの資金が「使用見込みが極めて低いまま放置」されていたと指摘されました。こうした基金型事業は、一度拠出すると年度ごとの執行率が見えにくく、内部監査や第三者チェックの機能が弱まりがちです。
税理士・FPとして補助金申請支援や受給後の経理処理を担当する際には、資金の性質(返還義務の有無・支出期限・余剰金の扱い)を明確にしておくことが重要です。返納義務のある資金を使途不明のまま計上すると、会計上・税務上のリスクが発生します。

2. 社会保障・医療分野の不正受給対策

厚生労働省関連で91件と最多の指摘があり、医療・介護・福祉の補助金で不正受給や報告書類の誤りが相次ぎました。これらの分野では、補助金の支出先が自治体・医療法人・社会福祉法人など多岐にわたり、チェックが複雑化します。
特にFPが関与するケースでは、医療法人や介護事業者の財務分析・再生支援の場面で、補助金収益を事業収支に含める際の「一時的性格」を誤認しないことが大切です。
また、補助金を原資とする設備投資に減価償却資産を計上する場合は、「国庫補助金等の圧縮記帳」の適用判断を適正に行う必要があります。

3. インフラ・防災事業の遅延と財政管理

道路・河川などの防災事業の遅れも報告書で指摘されています。補助金や公共工事関連の委託契約が年度をまたいで執行される場合、繰越明許費や継続費の処理が煩雑になり、決算期ごとの整合性を欠く例がみられます。
税理士が地方自治体や関連団体を顧問として支援する場合、執行遅延の原因が設計変更・資材高騰・契約事務の遅れなのかを把握し、年度内の予算執行率と翌年度の繰越残高の分析を行うことが、信頼性ある決算書作成につながります。

4. 実務で求められる「事後検証と情報公開」

会計検査院の指摘は単なる行政批判にとどまりません。補助金や基金事業では、事後検証(ex-post evaluation)を定期的に行うことが再発防止につながります。
税理士・FPが助成事業や基金の会計支援を行う場合、以下の点を確認しておくとよいでしょう。

  • 補助金交付要綱や基金設置要領の最新改訂を反映しているか
  • 交付申請時の事業計画と実績報告の整合性
  • 返納や減額交付のリスクを早期に検知できる内部統制

これらは行政監査や決算検査だけでなく、事業者のガバナンス評価にも直結します。


結論

税金の「無駄遣い」の多くは、制度設計や執行管理の複雑さに起因しています。
税理士・FPが果たすべき役割は、単に補助金の経理処理を行うことではなく、資金の流れを可視化し、持続可能な財政運営に貢献することです。
補助金・基金を扱うすべての現場で、透明性と説明責任を重視した会計支援を行うことが、これからの実務家に求められています。


出典
・会計検査院「令和6年度決算検査報告」
・日本経済新聞(2025年11月6日朝刊)「税の無駄遣い540億円 昨年度、検査院報告」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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