先日の日経新聞の朝刊に「NISA、運用資産見直し」という記事が載っていました。
今回も引き続き、こちらの記事について考えてみたいと思います。
(なお、この件については全6回のシリーズで書かせていただき、今回はその第3回となります。)
1. 老後のお金は「ためる」から「つかう」へ
NISA スイッチング解禁の議論は、単に投資商品の入れ替えにとどまりません。
とくに 60代以降の世代にとっては「老後資金をどう取り崩しながら運用するか」という現実的な課題と直結しています。
現役時代は「資産を増やすこと」が目的でしたが、退職後は「資産を守りつつ、生活費に使っていく」ことが重要になります。
2. 取り崩し戦略の基本
老後資金の取り崩しには大きく3つの方法があります。
① 定期売却型
毎年・毎月、一定額を売却して生活費に充てる方法。
→長寿リスクを分散できる一方、相場が悪いときの売却リスクが課題。
②インカム型(配当・分配金利用)
配当株や分配型投にスイッチし、収益部分を生活費に充てる。
→元本を減らさずにすむ可能性があるが、配当の変動に注意が必要。
③ ハイブリッド型
インカム収入+一部売却を組み合わせる。
→公的年金や退職金とバランスをとりやすい現実的な方法。
3.公的年金との組み合わせ
取り崩しを考えるうえで欠かせないのが公的年金です。
・65歳から年金受給開始:NISAからの取り崩し額は少なくて済む
・繰り下げ受給を選択:70歳から受け取る場合、その間の生活費をNISAで補う必要あり
・加給年金や遺族年金:世帯構成によって受け取り額が変わるため、NISA取り崩しの計画も調整が必要
→NISAは「年金の不足部分を補う役割」として設計するのが現実的です。
4.スイッチングを活かした老後戦略
スイッチングが解禁されれば、老後の資産運用もより柔軟になります。
・60代前半:株式や成長型から、債券・安定型商品へ段階的にシフト
・65歳以降:生活費に応じてインカム型投資信託へスイッチ
・70代以降:取り崩し額を抑えつつ、医療・介護費用に備えて現金化しやすい商品へ
→「長期投資→取り崩し投資→資金確保」という流れを、NISA枠内で調整できるようになります。
5. 注意点
老後の取り崩しには、いくつかのリスクも伴います。
・長生きリスク :想定より寿命が延びると、資金が不足する
・相場リスク:取り崩し時に相場下落が重なると元本を大きく減らす
・インフレリスク :生活費が上昇し、計画が崩れる可能性
→これらを踏まえ、定期的に資産配分を見直し、必要に応じてスイッチングを行うことが大切です。
6. まとめ
・老後資金は「ためる」から「つかう」ヘシフトする
取り崩しは「定期売却」「インカム型」「ハイブリッド型」の3つの基本戦略
・公的年金との組み合わせを考えることが不可欠
・スイッチング解禁により、老後も柔軟な資産管理が可能になる
NISA は若い世代のためだけでなく、「老後の取り崩し」を支える制度へと進化しようとしています。
長寿社会においては、投資の出口戦略こそが資産形成の核心になるのです。
ということで、今回は以上とさせていただきます。
次回(第4回)は「注意!スイッチングの落とし穴」をテーマに、頻繁な売買や誤った判断がどうリスクになるのかを考えます。
次回以降も、引き続きよろしくお願いいたします。
取り崩しながら運用する一老後の資産戦略
FP