2026年通常国会に向けて、労災保険制度の大きな見直しが進んでいます。注目されるのが、労災遺族年金における男女差の解消です。これまで、配偶者が「夫」の場合にのみ設けられていた年齢要件が撤廃される方向となりました。働き方や家族のかたちが多様化するなかで、この見直しは何を意味するのでしょうか。
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労災遺族年金にあった男女差
労災遺族年金は、労働災害で亡くなった労働者の収入によって生計を維持していた配偶者や子に支給される制度です。しかし現行制度では、配偶者が妻である場合は年齢要件がない一方、夫が受給する場合には「55歳以上」または一定の障害があることが必要とされてきました。
この差は、かつての「夫が働き、妻が扶養される」という家族モデルを前提にした制度設計の名残といえます。
見直しの内容
今回、労働政策審議会は、こうした男女差について「解消することが適当」とする報告書をまとめました。これを受けて厚生労働省は、夫に課されていた55歳要件を撤廃する法改正を目指しています。
あわせて、55歳以上または一定の障害がある妻にのみ認められていた「特別加算」も廃止され、遺族補償年金の支給水準は一律に年175日分へ統一される予定です。これにより、夫や子も同じ基準で給付を受けられる仕組みになります。
制度改正が映す社会の変化
この見直しは、単なる男女平等の問題にとどまりません。共働き世帯の増加や、男性が家計を支える立場になるケースの多様化など、現実の労働・家族構造の変化を制度に反映させる動きといえます。
また、遺族年金は「老後の年金」ではなく、働き盛り世代を含む生活保障の制度です。年齢要件が撤廃されることで、突然の労災による生活不安に対し、より実態に即した支援が可能になります。
あわせて進む労災保険の見直し
今回の報告書では、農林水産業の事業者を労災保険の強制適用対象に広げることや、フリーランス・一人親方が加入する特別加入団体の要件を法令で明確化することも盛り込まれました。
これらは、雇用される側だけでなく、個人事業者や多様な働き方をしている人も含めて「労災から守る」制度へと転換していく流れを示しています。
結論
労災遺族年金の男女差解消は、制度の公平性を高めると同時に、現代の働き方や家族像に制度を近づける重要な一歩です。
今後は、法改正の具体的な施行時期や、既存の受給者への影響も確認していく必要があります。労災保険は万が一のときに生活を支える基盤となる制度です。制度改正の動きを、働く側・家族を支える側の双方が自分ごととして捉えていくことが求められています。
参考
・日本経済新聞「労災遺族年金 厚労省、支給要件の男女差解消へ」
・労働政策審議会 労災保険制度見直しに関する報告書概要
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

