副業・フリーランスのための帳簿づけと収支内訳書の作成(確定申告・税制改正ナビ 第19回)

税理士
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副業やフリーランスで収入を得るようになると、確定申告に向けて「帳簿をどうつければいいのか」という疑問が生まれます。
会社員の給与所得と違い、事業所得や雑所得では自分で収入と経費を整理する帳簿づけが必要です。
特に、青色申告では複式簿記が求められ、白色申告でも簡易的な帳簿が義務化されています。
本稿では、副業・フリーランスに向けて、帳簿づけの基本と収支内訳書の作成ポイントを解説します。


帳簿づけの目的

帳簿づけは、単に申告のためだけでなく、事業の健全性と節税効果を高める手段でもあります。

【帳簿の目的】

  1. 所得(利益)の正確な計算
  2. 経費の適正な計上と証拠の確保
  3. 税務署への説明責任(税務調査対応)
  4. 経営管理・資金繰りの把握

帳簿が整っていれば、控除や青色申告特典を最大限に活用できるほか、融資・補助金申請の際にも信頼性を高めることができます。


帳簿の基本構成

個人事業主や副業者が作成すべき帳簿は、次の2種類に分かれます。

帳簿区分主な内容保存期間
主要簿仕訳帳・総勘定元帳7年
補助簿現金出納帳・経費帳・売上帳・仕入帳など7年

これらに加え、証憑類(領収書・請求書・契約書など)も7年間の保存義務があります。
電子取引の場合は、電子データのまま保存が求められます(電子帳簿保存法対応)。


青色申告と白色申告の違い

帳簿づけ方法は、申告の種類によって異なります。

区分帳簿の形式控除額特徴
青色申告(複式簿記)仕訳帳・総勘定元帳など最大65万円e-Tax提出または電子保存が条件
青色申告(簡易簿記)家計簿形式の単式記帳最大10万円小規模事業向け
白色申告簡易的な収支記録控除なし義務化後は帳簿保存必須

青色申告を選択すれば、控除だけでなく「赤字の3年繰越」や「家族給与の経費化」も可能になります。


帳簿づけの実務ステップ

副業・フリーランスの帳簿は、次の手順で整理します。

① 取引の記録

日々の売上・経費を、発生日ごとに記録します。

  • 現金取引 → 現金出納帳
  • 銀行入出金 → 通帳明細または会計ソフト連携
  • クレジット支払 → 利用明細をもとに経費仕訳

取引の都度入力するのが理想ですが、少なくとも月単位でまとめて記録する習慣をつけましょう。

② 勘定科目の設定

経費を分類する際に使う「勘定科目」は、国税庁の指定に準拠していれば自由に設定可能です。

【代表的な科目例】

  • 売上:売上高、講演収入、原稿料など
  • 経費:通信費、旅費交通費、消耗品費、外注費、接待交際費、支払手数料
  • 固定資産:パソコン・プリンターなど10万円以上の備品

自分の業種に合った科目名を使い、同じ費用は毎回同じ科目に仕訳することが大切です。

③ 残高確認・集計

月末や年末に、売上・経費・現金残高・預金残高が帳簿と一致しているか確認します。
一致しない場合は、未記帳の支出や二重計上の可能性をチェックします。


収支内訳書の作成

白色申告・簡易簿記の場合は、青色申告決算書の代わりに「収支内訳書」を提出します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」またはe-Taxで自動作成が可能です。

【収支内訳書の構成】

  1. 収入金額:売上・報酬など総収入
  2. 必要経費:勘定科目別の経費(通信費・交通費など)
  3. 減価償却費:10万円超の備品を複数年に分けて経費化
  4. 専従者給与:家族に支払う給与(届出済みの場合)
  5. 期末残高:売掛金・買掛金・在庫など

入力ミスが多いのは「減価償却」と「経費重複」です。
クラウド会計ソフトを使えば、自動で仕訳データを反映して収支内訳書を出力できます。


減価償却のポイント

10万円を超える資産(パソコン・カメラ・設備など)は、購入年に全額経費化できません。
耐用年数に応じて、毎年分割して経費にします。

資産の例耐用年数償却方法
パソコン4年定額法
カメラ5年定額法
事務机・椅子8年定額法
ソフトウェア5年定額法

ただし、30万円未満の資産は「少額減価償却資産の特例」により、青色申告者なら全額経費計上が可能です。


帳簿づけの効率化

クラウド会計ソフト(弥生、Money Forward、freeeなど)を使うことで、次の効果が得られます。

  • 銀行・クレカ明細の自動取込
  • 勘定科目の自動判定
  • レシート撮影で経費登録
  • 青色申告決算書・収支内訳書の自動作成

また、マイナポータル連携により、控除証明書データの自動入力も可能です。
紙とエクセル中心の管理から、デジタル一元化への移行が進んでいます。


結論

副業やフリーランスの帳簿づけは、手間をかけるほど確定申告がスムーズになり、
経費の取りこぼしを防ぐ最大の節税策になります。
特に、電子帳簿保存法・マイナポータル連携・クラウド会計の3点を組み合わせることで、
「正確・自動・時短」の記帳体制を実現できます。
日々の取引をコツコツ記録することが、信頼できる事業運営の第一歩です。


出典
・国税庁「帳簿の記帳・保存義務」
・国税庁「収支内訳書の記載方法」
・中小企業庁「個人事業主の会計ガイド」
・デジタル庁「電子帳簿保存法対応のポイント」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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