熟年離婚や中高年の離婚が珍しくなくなった今、離婚後の老後資金をどう確保するかは大きな課題です。
その中でも見落とされがちなのが「年金分割」の手続きです。
2026年度から、離婚時の年金分割について、請求できる期間がこれまでの2年から5年へと延長されます。
この制度改正は、特に専業主婦や扶養内で働いていた人にとって、老後の安心につながる重要な変更です。
本記事では、年金分割制度の基本と、今回の請求期間延長の意味、注意すべきポイントを整理します。
年金分割制度の基本構造
公的年金は二階建て構造になっています。
国民共通の基礎年金と、会社員などが加入する厚生年金です。
年金分割の対象になるのは、このうち厚生年金部分のみです。
婚姻期間中に形成された厚生年金の記録を、離婚時に夫婦間で分け合う仕組みが年金分割制度です。
分割された年金は、原則として65歳から終身で受給できます。
すでに年金を受給している場合は、請求した翌月から反映されます。
年金分割には2つの方式があります
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
合意分割
合意分割は、夫婦のどちらか、または双方が厚生年金に加入していた期間が対象です。
2007年4月以降に離婚した人が利用できます。
夫婦の合意、または家庭裁判所の手続きを通じて、分割割合を決めます。
年金額の多い側から少ない側に分ける仕組みで、少ない側が受け取れる割合は最大で50%までとされています。
3号分割
3号分割は、2008年4月以降に第3号被保険者であった期間が対象です。
配偶者が会社員などで、自身が扶養に入っていたケースが該当します。
この分割は夫婦の合意がなくても請求でき、分割割合は法律で50%と決められています。
ただし、2008年3月以前の期間や扶養を外れていた期間については、合意分割の対象になります。
請求期間が5年に延びる意味
これまで年金分割の請求期限は、離婚後2年以内とされていました。
しかし実際には、引っ越しや仕事探し、生活の立て直しに追われ、期限を過ぎてしまうケースが少なくありませんでした。
特に若い世代や、婚姻期間が短い夫婦では、金額が少ないことから制度自体を後回しにする傾向も見られます。
今回の改正で請求期間が5年に延びることで、
・生活が落ち着いてから手続きできる
・制度の存在を後から知っても間に合う
・熟年離婚後でも現実的に請求できる
といったメリットが生まれます。
制度を知るタイミングと請求期限のギャップを埋める、実務的に非常に意味のある改正といえます。
年金分割は老後にどれほど影響するのか
厚生労働省の調査によると、年金分割を受けた人の年金額は、分割前に比べて着実に増えています。
例えば、年金分割によって月額が数万円増えるケースもあり、3号分割のみであっても年金額の底上げ効果は確認されています。
一見すると月数千円から1万円程度の増加に見えるかもしれません。
しかし年金は終身で支給されるため、長期的に見ると生活の安定度に大きく影響します。
老後資金は一度きりの退職金や預貯金だけでなく、毎月の安定収入があるかどうかが重要です。
その意味で、年金分割は小さく見えても確実な老後対策の一つです。
離婚時に見落としやすい注意点
年金分割は自動的に行われる制度ではありません。
必ず本人が請求しなければ適用されません。
また、分割割合や対象期間は、婚姻期間中の働き方や加入状況によって異なります。
離婚協議書や調停調書に年金分割の内容を明記しておくことも重要です。
さらに、年金分割は老後の生活設計全体の一部にすぎません。
財産分与、退職金、住宅、預貯金とのバランスを考えた上で判断する必要があります。
結論
年金分割の請求期間が5年に延びることで、離婚後の老後不安に対するセーフティーネットが一段と強化されます。
特に、これまで制度を知らなかった人や、離婚直後に手続きまで手が回らなかった人にとっては、大きな救済措置です。
離婚は人生の大きな転機ですが、老後の生活はその先も続きます。
年金分割という制度を正しく理解し、使える権利はきちんと使うことが、将来の安心につながります。
参考
・日本経済新聞 別れた夫婦の年金分割、請求期間2年から5年に延長
・厚生労働省 公的年金制度に関する公表資料
・厚生年金保険法 関係条文
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

