2025年以降、日本経済は「物価高・株高・円安」が同時に進む局面に入りました。株価は史上最高値圏にある一方、家計は食料品やエネルギー価格の上昇に直面し、生活実感との乖離は拡大しています。
この物価高の背景として見落とされがちなのが、円安の影響です。円安は単なる為替の問題ではなく、家計、税制、年金、資産運用にまで広く波及します。本稿では、円安是正を「生活者の視点」「FP・税制の視点」から整理します。
円安が家計に与える実務的な影響
円安の最大の問題点は、輸入物価を通じて家計の支出を恒常的に押し上げる点にあります。エネルギー、食料品、日用品など、生活必需品の多くは海外価格の影響を受けやすく、円安が続くほど実質可処分所得は目減りします。
賃金上昇が追いつかない状況では、これは実質的な「隠れ増税」と同じ効果を持ちます。名目税率が変わらなくても、消費税は価格上昇分に比例して負担が増えるため、家計にとっては二重の圧迫要因となります。
積極財政と物価高のズレ
物価高対策として給付金や補助金が打ち出される場面もありますが、供給制約が主因の場合、需要を刺激する政策は必ずしも有効とは限りません。
FP実務の観点では、一時的な給付よりも、物価上昇が家計収支に与える中長期的な影響をどう吸収するかが重要です。円安が続けば、生活費のベースライン自体が切り上がり、老後資金計画や教育費計画の前提が崩れていきます。
円安と税制の見えにくい関係
税制面でも円安は影響を及ぼします。まず、消費税は物価上昇とともに自然増収となります。一方で、所得税や住民税は名目賃金が十分に上がらなければ増えにくく、結果として逆進性が強まります。
さらに、年金世代にとっては深刻です。公的年金は物価スライドがあるとはいえ、実際の生活費上昇に完全に追いつくわけではありません。円安による輸入インフレは、年金の実質価値を確実に削ります。
金融政策と円安の「信認問題」
理論的には金利上昇は円高要因です。しかし現実には、利上げ局面でも円安が進みました。これは市場が「今後も急激な利上げはできない」と見ていることの表れです。
FPの立場から見れば、これは極めて重要なシグナルです。為替が政策当局への信認を反映する以上、円安は単なる市場変動ではなく、長期的な家計リスクとして認識すべき現象になります。
円安と資産運用の落とし穴
円安局面では、外貨建て資産や海外株式が有利に見えがちです。しかし、円安が「是正される局面」を想定しない運用は危険です。
FP実務では、為替益を前提にした運用設計は避け、円高・円安どちらにも耐えられる分散が重要になります。また、円安による物価高を前提に、生活防衛資金の確保や取り崩し計画の見直しも欠かせません。
円安是正が意味するもの
円安是正は、輸出企業のための議論ではありません。家計の購買力を守り、年金や賃金の実質価値を安定させるための基盤政策です。
耐久消費財や資本財ベースの購買力平価を見ると、現在の円安水準が行き過ぎていることは示唆されています。少なくとも「生活者目線」では、是正に向けた姿勢が必要です。
結論
物価高対策を本気で進めるのであれば、円安の放置は選択肢になりません。円安は、家計、税制、年金、資産形成のすべてに影響する「横断的リスク」です。
2026年は、株価や名目成長率だけでなく、生活者の実質購買力を回復させる政策へ転換できるかが問われる年になります。FP・税制の視点からも、円安是正に真剣に向き合うことが不可欠です。
参考
日本経済新聞
鶴光太郎「円安是正に真剣に向き合え」
大妻女子大学教授
2026年1月13日 朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

