住宅の修繕費が急上昇しています。
外壁塗装や屋根修理、水回り交換などの費用はここ数年で2割以上上昇しました。標準的な戸建て住宅では、築後50年間の基礎的修繕費が1500万円近くに達するとの試算もあります。
住宅は「購入時」よりも「維持費」が長期家計に与える影響の方が大きい場合があります。本稿では、修繕費高騰の背景と、優先順位の考え方、そして戸建て・マンションそれぞれの資金計画のポイントを整理します。
修繕費はなぜここまで上がったのか
総務省の消費者物価指数では、外壁塗装・屋根修理・水道工事などの住居関連費用は2020年比で2割超上昇しています。背景には大きく3つの要因があります。
第一に人件費の上昇です。建設業界では職人の高齢化と人手不足が続き、大工の人数は過去20年で大きく減少しました。リフォーム分野は省人化技術が導入しにくく、労務費上昇が直接価格に転嫁されやすい構造です。
第二に資材価格の上昇です。設備機器や建材はカタログ改訂のたびに値上げが続いているとの指摘もあります。輸入材に依存する品目も多く、円安はさらなるコスト増要因になります。
第三に工事の集中リスクです。修繕費は毎年均等に発生するのではなく、築30年前後や45年前後などに集中しやすいという特徴があります。まとまった支出が発生するため、家計への衝撃が大きくなります。
優先順位の原則 ― 「中」より「外」
修繕の優先順位を考えるうえで重要なのが、「内装より外装を先に」という原則です。
外壁や屋根の劣化を放置すると、雨漏りや構造体の腐食につながります。内装を先にきれいにしても、後から雨漏りが発生すればやり直しになる可能性があります。外装の劣化は安全性にも直結します。
修繕を考える際の視点は次のとおりです。
- 構造安全性に関わるもの
- 雨水侵入を防ぐもの
- 設備の機能維持に関わるもの
- 美観や快適性に関わるもの
この順序で考えると、判断を誤りにくくなります。
戸建て住宅の資金計画
戸建て住宅は、原則として個人で修繕費を積み立てる必要があります。修繕費の特徴は「周期性」と「集中性」です。
例えば、外壁塗装は15年前後、屋根防水は20年前後、水回り設備は20〜30年程度で更新時期を迎えます。これらが重なると数百万円単位の支出になります。
実務的な対応としては次の3点が重要です。
・ライフイベントとの重なりを把握する
・専門家に長期修繕計画を作成してもらう
・優先順位を明確にして段階的に実施する
教育費や老後資金準備と修繕時期が重なると家計は圧迫されます。住宅は「資産」であると同時に「固定費の塊」でもあります。購入時よりも維持戦略が重要です。
マンションの修繕積立金問題
マンションの場合は修繕積立金制度がありますが、安心とは限りません。国土交通省の調査では、修繕計画に対して積立金が不足している物件が3割を超えるとされています。
不足した場合の対応は主に次の3つです。
- 一時金徴収
- 積立金の引き上げ
- 金融機関からの借入
借入で一時的にしのぐことも可能ですが、最終的には返済負担が区分所有者に転嫁されます。早期に積立金を見直す方が、長期的な負担総額は小さくなる傾向があります。
管理組合は最新の工事相場を踏まえ、長期修繕計画を定期的に更新する必要があります。積立金不足は資産価値にも影響します。将来売却を考える場合にも重要な論点です。
「直す」か「縮む」かという選択
家族構成や年齢によっては、全面改修ではなく「縮小」という選択肢もあります。
子どもが独立する時期であれば、使用頻度の低い設備は最低限の修理にとどめる判断も合理的です。すべてを新品同様にする必要はありません。
重要なのは、感情ではなく機能と安全性で判断することです。住宅修繕は「満足度」ではなく「維持戦略」です。
結論
住宅修繕費は今後も高止まりする可能性があります。
対策の要点は次の3点です。
・優先順位は「外から中へ」
・長期修繕計画を可視化する
・早期対応で総コストを抑える
住宅は購入時点ではなく、維持管理の質によって価値が決まります。
修繕は支出ではなく、リスク管理です。家計設計の中に住宅維持費を組み込み、計画的に備えることが求められます。
参考
日本経済新聞 2026年2月21日朝刊
「<ステップアップ>家の修繕、優先順位決める」
「不足が3割超、早期対応が有効」
