企業の地方移転に税優遇拡充 第3回 空き家・中古不動産と地方移転税制 ― 不動産・相続との接点 ―

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前回は、中小企業が地方移転税制をどう使うべきかを、実務・判断ポイントの観点から整理しました。
第3回では視点を広げ、今回新たに対象となった「中古物件」が、地方の空き家・遊休不動産、さらには相続問題とどのようにつながるのかを考えます。
この税制は、企業政策であると同時に、不動産政策・相続対策とも密接に関係しています。

地方に眠る「使われない不動産」

地方では、人口減少や産業構造の変化により、使われなくなった事務所、工場、社宅、店舗などが数多く存在します。
これらは、住宅の空き家問題と同様に、管理コストだけがかかり、地域の負担となってきました。

今回の税制改正で、中古物件の購入や改修が地方移転税制の対象となったことで、こうした不動産が「企業活動の拠点」として再評価される可能性が生まれています。

中古物件活用がもたらす地域への効果

中古物件を活用した企業移転は、新築と比べて初期投資を抑えられるだけでなく、地域への波及効果も異なります。
既存の建物を改修して使う場合、地元の建設業者や設備業者が関与することが多く、地域内での経済循環が生じやすくなります。

また、長期間空いていた不動産に人の出入りが戻ることで、防犯や景観の面でもプラスの効果が期待できます。

企業と個人が交差する不動産取引

地方の中古事務所や工場の所有者は、個人であるケースも少なくありません。
高齢の経営者や相続で不動産を引き継いだものの、使い道がなく放置されている例も多く見られます。

企業の地方移転が進めば、こうした個人所有の不動産が売却や賃貸の対象となり、相続後の「負動産」が「活用資産」に転じる可能性があります。

相続と地方移転税制の間接的な関係

地方移転税制そのものは、相続税対策を目的とした制度ではありません。
しかし、結果として相続問題の出口をつくる役割を果たす場面は考えられます。

使われない不動産は、相続時に評価額だけが残り、管理や処分に悩む原因となりがちです。
企業移転による需要が生まれれば、売却や事業用転用が進み、相続人にとっての選択肢が広がります。

中小企業と不動産オーナーのマッチング

今後の課題は、地方移転を検討する企業と、遊休不動産を抱える個人・法人とのマッチングです。
税制が整っても、情報が届かなければ実際の取引にはつながりません。

自治体や地域金融機関、不動産業者が間に入り、物件情報と企業ニーズを結びつける仕組みが重要になります。
地方移転税制は、その後押しとなる「材料」の一つにすぎません。

注意すべき実務上のポイント

中古物件の活用には、税制以外の注意点もあります。
耐震性、用途地域、建築基準、設備更新費用など、取得後に想定外のコストが発生することもあります。

また、事業用として取得した不動産は、将来の撤退や縮小時に再び遊休化するリスクも抱えます。
短期的な税制メリットだけでなく、長期的な出口戦略まで見据える必要があります。

結論

中古物件を対象に含めた地方移転税制は、企業の投資判断を変えるだけでなく、地方の不動産問題や相続問題にも間接的な影響を及ぼします。
空き家・遊休不動産を「地域の負担」から「地域資源」へ転換できるかどうかは、税制だけでなく、地域全体の取り組みにかかっています。

企業の地方移転は、単なる節税策ではなく、地域と企業、そして個人の資産をつなぎ直す試みでもあります。


参考

・日本経済新聞「企業の地方移転に税優遇 中古物件購入も対象に」
・2026年度 税制改正大綱(地方創生・法人税関係)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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