🏢 「学校教育の次」は社会の出番
2022年から小中高で義務化された金融教育。
その成果が見え始めた一方で、社会人やシニア層には「学び直し(リスキリング)」の波が広がっています。
日本経済新聞のアンケートでも、「金融教育を受けたことがない」と答えた人が43%。
義務教育世代との“金融知識格差”が浮き彫りになりました。
金融教育は一度きりのものではなく、
人生の節目ごとに学び直す「生涯教育」へと進化すべき時代です。
その担い手となるのが、企業と地域コミュニティです。
💼 第1章:企業が取り組む「職場発・金融教育」
📊 なぜ今、職場で金融教育が必要なのか
物価高、年金制度改革、NISA拡充、そして退職金の課税見直し――。
社会のルールが変わるたびに、働く人の“お金の判断”もアップデートが求められています。
企業にとっても、従業員の金融リテラシー向上は福利厚生や生産性の向上につながります。
💡「ライフプランセミナー」は“給与の次”の福利厚生
企業が従業員の資産形成や老後準備を支援することは、
もはや“人材定着策”の一部です。
🧩 実際の取り組み例
| 企業タイプ | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 製造業(大手) | 退職金・企業型DC説明会を年1回開催 | 将来不安の軽減・従業員の定着率上昇 |
| IT企業 | 社内FP相談・AI家計診断の導入 | 福利厚生のデジタル化で若手の満足度UP |
| 地方銀行 | 新入社員に金融リテラシー研修を実施 | 顧客対応力の底上げ |
| 中小企業 | 顧問税理士・FPと連携したミニ勉強会 | 管理職層の老後不安解消・社内交流促進 |
📣 税理士・FPの役割も拡大中
企業向けに「退職金受け取り方セミナー」や「副業・確定申告研修」を行う事例が増えています。
税と社会保障の知識を組み合わせた教育は、現場で非常に実用的です。
🏛️ 第2章:自治体が進める「地域発・金融リテラシー講座」
地方自治体や公的機関も、住民の生活安定と地域経済の健全化のために金融教育を推進しています。
🏫 主な取り組み
- 市民講座(金融庁・消費生活センター連携)
テーマ例:「老後資金の考え方」「高齢期の相続・贈与」「子どもと学ぶ家計術」 - ふるさと納税・税制セミナー
実際の税金の使い道を学びながら、地域経済を考える内容に。 - 消費者トラブル防止講座
詐欺・悪質投資・高齢者被害など、身を守るための金融知識を伝授。
こうした講座の講師として、地元の税理士・FP・行政書士が登壇するケースが増えています。
地域に根ざした専門家が、地元住民と同じ目線で教える――これが最大の強みです。
🗣️ 「金融教育を“難しい話”にしないこと」
参加者の多くは「やっと聞けた」「もっと早く知りたかった」と話します。
“生活に直結する話”であることを伝えることが鍵です。
🏘️ 第3章:地域コミュニティが生む“学び合いの場”
地域の中小企業、商店街、PTA、NPOなども、金融教育を支える力を持っています。
たとえば――
- 商店街で「親子マネー教室」や「おこづかいワークショップ」を開催
- 信用金庫・JA・地元銀行による出張授業
- シニア向け「終活×税金セミナー」や「相続登記義務化対策講座」
こうした取り組みの共通点は、“顔の見える学び”であることです。
オンラインでは伝わりにくい信頼や安心感を、地域が担っています。
💬 税理士FPとしての視点
「地域金融教育の最大の価値は“対話”です。
専門用語を使わず、暮らしの言葉で伝えることが、
金融教育を“社会文化”に変えていく第一歩です。」
🧭 第4章:社会全体で築く「金融教育の循環モデル」
家庭・学校・企業・地域――それぞれが金融教育の一部を担い、
世代や立場を超えて“学び合う”ことが理想です。
🔁 循環のイメージ
- 家庭で話す(親子でお金の会話)
- 学校で学ぶ(制度・仕組みを理解)
- 職場で実践(給与・投資・税金を体験)
- 地域で共有(学びを伝え、支え合う)
この循環を支えるのが、専門家とAIの橋渡し役です。
税理士・FP・自治体・企業が連携し、AIツールを活用すれば、
“どこでも学べる金融教育”が実現します。
✍️ まとめ ― 金融教育は「社会インフラ」になる
金融教育はもはや一部の知識人のものではなく、
社会を支えるインフラの一部になりつつあります。
- 企業:働く人のライフプランを支援
- 自治体:地域住民の生活防衛を支援
- 専門家:実践的な知識を伝える架け橋
- AI:学びを個別最適化する新しい先生
お金の知識は「知る人だけが得をする」時代から、
「誰でも学べる社会へ」と変わろうとしています。
税理士・FP・教育関係者・自治体が手を携えて、
“金融教育が当たり前にある社会”を作ること。
それが、これからの日本の豊かさを支える礎になるでしょう。
📘参考資料
・日本経済新聞(2025年10月16日朝刊)「資本騒乱 さらば運用貧国 アンケートから(下)」
・金融庁「金融経済教育推進会議」報告書
・総務省「地方公共団体における金融教育の推進」
・日本FP協会『地域で広げる金融リテラシー』
・中小企業庁「福利厚生としての金融教育支援」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
