令和7年分の確定申告は、デジタル化が一つの節目を迎えた年といえます。
スマホ申告の本格化、マイナポータル連携の拡充、ボイスボットやチャットボットの導入など、申告手続そのものは年々「やりやすく」なっています。
一方で、申告の本質である「自己申告」である点は、これまでと何も変わっていません。
便利になったがゆえに、判断や確認を省略してしまうリスクも、同時に高まっています。
本稿では、令和7年分確定申告を通じて改めて考えたい、デジタル時代における自己申告との向き合い方を整理します。
デジタル化で変わったのは「手続」、変わらないのは「責任」
スマホやPCを使った申告では、入力補助や自動計算、自動取得が当たり前になりました。
しかし、これらはあくまで「手続を支援する仕組み」に過ぎません。
どの所得が課税対象か
どの控除が適用できるか
申告が必要かどうか
これらを最終的に判断する責任は、今も納税者自身にあります。
国税庁のシステムが自動計算してくれるからといって、内容の正否まで保証してくれるわけではありません。
デジタル化によって、申告は「簡単」になったのではなく、「判断の省略が起きやすく」なったと捉える方が実態に近いといえます。
自動取得データとの正しい距離感
マイナポータル連携により、医療費、寄附金、給与、保険金などが自動取得されるようになりました。
この仕組みは、記載漏れや転記ミスを防ぐ点で非常に有効です。
ただし、自動取得されたデータは「確認不要な正解」ではありません。
課税区分の判断が必要な金額が含まれていないか
非課税部分と課税部分が混在していないか
家族分や対象外データが抜けていないか
こうした点を確認せずに申告を完了させると、結果的に自己申告としての精度は下がってしまいます。
自動取得は「入力の省力化」であり、「判断の代替」ではないという意識が不可欠です。
スマホ申告が突きつける「理解せずに進める」リスク
スマホ申告は、操作のしやすさという点で非常に優れています。
画面の案内に従って進めば、申告書を完成させること自体は難しくありません。
その反面、
なぜこの金額が入っているのか
どの制度が適用されているのか
といった背景を理解しないまま、申告が完了してしまう危うさもあります。
特に、制度改正の影響を受ける年分では、「知らないうちに前提が変わっていた」というケースが起こりやすくなります。
スマホ申告は、「内容を理解している人ほど向いている」という、少し逆説的な側面を持っています。
自己申告に必要なのは「完璧さ」ではなく「把握」
デジタル時代の自己申告において重要なのは、すべてを完璧に理解することではありません。
必要なのは、自分の申告内容の全体像を把握していることです。
自分の所得は何種類あるのか
申告が必要な理由は何か
今回の申告で判断が必要な点はどこか
これらを把握したうえで、
スマホで完結させる
PCで確認しながら進める
専門家に相談する
といった手段を選ぶことが、現実的な自己申告のあり方といえます。
デジタル時代だからこそ「頼る判断」も自己申告の一部
自己申告という言葉から、「すべて自分でやらなければならない」と感じる人も少なくありません。
しかし、判断が難しい部分を専門家に任せることも、立派な自己申告の選択です。
特に、
事業所得や不動産所得がある
保険金や年金の課税関係が複雑
制度改正の影響が大きい
といった場合、無理にデジタル申告を完結させることが、必ずしも合理的とは限りません。
「自分で判断できる範囲」と「任せる範囲」を切り分けることが、リスク管理の観点からも重要です。
結論
令和7年分確定申告は、デジタル技術によって手続が大きく進化しました。
しかし、申告の本質である「自己申告」は、今も変わらず納税者自身の責任のもとにあります。
デジタルを使いこなすとは、
すべてを自動化することではなく、
自動化された結果を理解し、確認し、必要に応じて立ち止まることです。
便利さに流されるのではなく、自分の申告内容と正面から向き合うこと。
それが、デジタル時代における健全な自己申告の姿といえます。
参考
・税のしるべ「7年分確定申告はスマホとマイナポータル連携の利用を、ボイスボットも試行的に導入」(2026年1月5日)
・国税庁 令和7年分所得税等確定申告に関する公表資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
