基準地価上昇と暮らし・資産戦略(第5回)
4回にわたって、2025年基準地価の上昇について、東京圏の動き、地方都市の温度差、経済との関わり、そして生活者への影響を見てきました。
最終回では、これらを踏まえて「これからの展望」と「私たちが取るべき資産形成の考え方」を整理します。
1. 地価上昇は続くのか?
都心部は引き続き堅調
専門家の見通しでは、「都心を中心に地価上昇はしばらく続く」とされています。
理由は以下のとおりです。
- 再開発プロジェクトの進行(東京・大阪・福岡など)
- インバウンド需要の回復
- 海外マネーの流入
特に東京23区の都心部は、今後も高級住宅やオフィス需要が強く、価格を支える要因が揃っています。
リスク要因も存在
一方で、上昇が永続的に続くとは限りません。
- 金利上昇:住宅ローンの負担が増えれば需要が冷え込む
- 世界経済の減速:海外マネーが引き上げられる可能性
- 人口減少:長期的には国内需要が縮小
つまり、「短期的には上昇基調だが、長期的にはリスクを内包」というのが現実的な見方です。
2. 住宅購入の戦略
地価が上がり続ける中で、住宅購入をどう考えるかは多くの人にとって悩ましいテーマです。
今すぐ買うか、待つか
- 今買う場合:金利がまだ低水準のうちに固定金利で抑えるメリットあり
- 待つ場合:地価の上昇が一服するか、景気後退局面を待つ戦略
ただし「自宅」は投資目的だけでなく生活の基盤でもあります。ライフステージに合わせて柔軟に考えることが大切です。
郊外・地方という選択肢
東京圏にこだわらず、郊外や地方中核都市を選ぶことで、価格を抑えつつ快適な住環境を得る人も増えています。リモートワーク普及がその後押しをしています。
3. 相続・税負担への備え
地価上昇は相続税や固定資産税の増加につながります。
相続対策の方向性
- 早めの生前贈与で資産を分散
- 小規模宅地等の特例を活用して評価額を圧縮
- 不動産を一部売却して現金化し、納税資金を確保
「資産が増えたから安心」ではなく、「税負担が増える前に備える」視点が必要です。
4. 投資としての不動産
インフレや円安が続く中、不動産は依然として資産防衛の手段として注目されています。
メリット
- 現金よりインフレに強い
- 賃貸収入によるキャッシュフローを得られる
- 都市部の再開発エリアでは資産価値上昇が期待できる
デメリット
- 流動性が低く、すぐに現金化できない
- 固定資産税・修繕費といった維持コストがかかる
- 価格が下がるリスクも常に存在
株式や投資信託と違い、不動産は「一発勝負」の要素が強いため、慎重な判断が欠かせません。
5. 分散投資という考え方
地価上昇のニュースに触れると「不動産を持たなければ」と思いがちですが、資産形成は分散が基本です。
- NISA・iDeCoを活用した株式・投資信託
- 預貯金や国債による安全資産の確保
- 不動産投資信託(REIT)による少額からの不動産分散
このように複数の資産を組み合わせることで、地価の上昇・下落どちらにも備えやすくなります。
6. 「暮らし」と「資産形成」をつなげる視点
地価の動きは、単なる不動産市場の話にとどまりません。
- 住宅を買うか、借りるか
- 相続に備えるか、今使うか
- 都心に住むか、地方を選ぶか
私たちの暮らしそのものに直結するテーマです。
「地価上昇=資産価値の増加」と考えるだけでなく、生活設計の一部としてどう位置づけるかを意識することが、これからの時代に必要になります。
まとめ
2025年の基準地価上昇は、東京を中心に全国へ広がり、住宅購入や相続、資産形成に大きな影響を与えています。
- 短期的には都心部を中心に上昇基調
- 長期的には人口減少や金利動向がリスク要因
- 住宅購入・相続対策・投資判断には冷静な見極めが必要
このシリーズを通じて強調したいのは、「地価の動きは暮らしに直結する」という点です。
ニュースを一歩踏み込んで理解することで、自分の人生や家計にどんな意味を持つのかが見えてきます。
これからも、土地や不動産の動向を「遠い話」ではなく「自分ごと」としてとらえ、よりよい資産形成と暮らしの選択につなげていきましょう。
📖 参考
日本経済新聞「基準地価4年連続上昇 東京けん引、海外マネー流入」
2025年9月17日付・総合2面
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

