人口減少が進むとき、最も分かりやすく姿を変えるのが「不動産」です。
住宅が余り、空き家が増え、地価が伸び悩む。こうした変化は、個人の資産問題にとどまらず、自治体の税収構造や都市の維持そのものに影響を与えます。
東京一強が揺らぐ局面では、不動産・相続・空き家の問題が一本の線でつながり、税収の連鎖的な変化を引き起こします。本稿では、その構造を整理します。
不動産は「人口の器」である
不動産は、人口と経済活動を受け止める「器」です。
人口が増え続ける局面では、新築や再開発が進み、地価は上昇しやすくなります。自治体にとっては、固定資産税の評価額が上がり、安定した税収源となります。
しかし人口減少局面では、この前提が崩れます。
- 住宅需要が縮小する
- 空き家や空室が増える
- 地価が横ばい、または下落する
こうした変化は、都市部であっても避けられません。人口減少が確実視される中で、不動産は「増え続ける資産」から「管理が必要なストック」へと性格を変えていきます。
相続が不動産問題を加速させる
人口減少と同時に進むのが高齢化です。
高齢化が進む社会では、不動産は売買よりも相続を通じて次世代に引き継がれるケースが増えます。
ここで問題となるのが、次のような構造です。
- 相続人が遠方に住んでいる
- 住む予定のない実家を引き継ぐ
- 売却も活用も進まない
結果として、不動産は「所有されているが使われていない」状態になります。
これは市場に出回らないため価格形成が進まず、地域全体の不動産価値にも影響を与えます。
相続が繰り返されるほど、管理されない不動産が蓄積され、空き家問題は構造的に拡大していきます。
空き家の増加が税収に与える影響
空き家が増えても、すぐに固定資産税が消えるわけではありません。
しかし、長期的には次のような影響が避けられません。
- 建物の老朽化による評価額の低下
- 管理不全による利用価値の低下
- 地域全体の地価下落
固定資産税は評価額を基礎として課税されます。
空き家が増え、建物の価値が下がれば、税収は徐々に減少します。
さらに、管理不全空き家への対応が進めば、税負担を重くして利用を促す一方で、解体や除却が進むことで課税対象そのものが減る可能性もあります。
短期的な税収確保と、長期的な都市維持の間で、自治体は難しい選択を迫られます。
タワーマンションも例外ではない
都市部では、空き家問題は戸建てだけの話ではありません。
大量供給されたマンション、とりわけ高層マンションでは、別のリスクが潜んでいます。
- 高齢化した所有者
- 相続による権利関係の複雑化
- 管理組合の担い手不足
これらが重なると、修繕や管理が滞り、建物全体の価値が下がります。
評価額が下がれば固定資産税も減り、周辺不動産の価値にも波及します。
人口減少社会では、「建てた後にどう維持するか」が不動産政策の中心テーマになります。
税収の連鎖が自治体を縛る
不動産価値の低下は、単独では終わりません。
- 固定資産税の減少
- 住民税を支える人口の減少
- 税収減による行政サービス縮小
この連鎖が進むと、地域の魅力はさらに低下し、人が離れるという悪循環に陥ります。
これまでのように
「人口が増える → 不動産が活発化 → 税収が増える」
という循環は、人口減少社会では期待できません。
個人にとっての不動産の意味も変わる
この構造変化は、個人にとっても重要です。
不動産は、将来必ず価値を生む資産とは限らなくなります。
- 相続すれば管理責任が伴う
- 売却できるとは限らない
- 地域によって価値の差が拡大する
「持つこと」がリスクになる場面が増え、住まい・相続・税を一体で考える必要性が高まります。
結論
人口減少社会では、不動産・相続・空き家は切り離せません。
そしてそれは、自治体の税収構造と直結しています。
東京一強の終焉は、不動産が自動的に価値を生む時代の終わりを意味します。
これからは、
- どこにある不動産か
- どう管理されているか
- 次世代に引き継げるのか
が問われます。
不動産問題は、個人の資産問題であると同時に、地域と税の持続性を左右する社会的テーマなのです。
参考
- 日本経済新聞「終わる東京一強 人口減に転換」
- 日本経済新聞「地方も『自給』試される」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
