三菱重工業はなぜ評価されたのか──資産効率改革が生んだ成長モデル

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

近年、日本の重厚長大企業の中で、株式市場から突出した評価を受けている企業があります。三菱重工業です。
時価総額は14兆円を超え、5年前と比べると約13倍という急成長を遂げました。防衛需要やエネルギー関連需要の拡大といった外部環境の追い風は確かに存在しますが、それだけでこの評価に至ったとは考えにくいでしょう。
背景にあるのは、長年にわたって進められてきた「資産効率を軸とした経営改革」です。本稿では、三菱重工の変化を整理し、その成長の本質を読み解きます。

「機械のデパート」からの脱却

三菱重工はかつて、事業領域の広さから「機械のデパート」と呼ばれてきました。多様な技術と製品群は強みである一方、事業ごとの収益性や将来性が見えにくいという課題を抱えていました。
この構造にメスを入れたのが、2013年頃から本格化した戦略的事業評価制度です。グループ事業を細分化し、それぞれを独立した単位として財務諸表を作成。収益性、財務健全性、成長性を可視化し、社内で格付けを行う仕組みを整えました。

資本コストを意識した経営

改革の特徴は、加重平均資本コスト(WACC)を事業単位で設定した点にあります。
事業の格付けが低ければ、資本コストは高くなります。つまり「資本を使う以上、それに見合うリターンを出せているか」という問いが、すべての事業に突きつけられたのです。
この仕組みにより、不採算事業や低採算事業の整理が進みました。国産ジェット旅客機事業をはじめ、工作機械、舶用ディーゼルエンジンなど、毎年のように撤退や売却が実行され、経営資源はより収益性の高い分野へと再配分されていきました。

「筋肉質」になった財務体質

こうした取り組みの結果、財務指標は大きく改善します。
総資産利益率(ROA)は改革着手時の約2.5%から3%台後半へ上昇し、自己資本利益率(ROE)は2桁水準に到達しました。負債資本倍率(DEレシオ)も大きく低下し、財務の安定性は一段と高まっています。
単に利益を追うのではなく、「どれだけ効率よく資産を使って利益を生み出しているか」を重視した結果といえるでしょう。

追い風を生かせた理由

財務体質が引き締まったところに、外部環境の追い風が重なりました。
防衛予算の拡大、AI普及による電力需要増加、高効率な発電用ガスタービンへの需要、原子力関連の再評価などです。
注目すべきは、こうした機会を「無理な投資」で追わなかった点です。生産効率や運転資金を意識しつつ受注を積み上げ、結果として受注残高は11兆円を超える水準に達しました。

ITO改革と次のステージ

2025年に打ち出された「Innovative Total Optimization(ITO)」は、これまでの改革を次の段階へ進める構想です。
全体最適による資源配分と、技術の組み合わせによる領域拡大を同時に進め、コングロマリットとしての価値を最大化する考え方といえます。
世界では事業の選択と集中が主流ですが、三菱重工は多数の基盤技術を組み合わせる独自路線で、コングロマリット・プレミアムの発揮を狙っています。

結論

三菱重工の株価上昇は、単なるテーマ株としての評価ではありません。
長年にわたる資産効率改革によって経営の質を高め、そこに外部環境の追い風を重ねることができた結果です。
足元では株価指標に過熱感もありますが、同社が示してきたのは「重厚長大企業でも、資本効率を軸に成長モデルを描ける」という一つの実例です。今後、ITO改革がどこまで実を結ぶのかが、次の評価軸となるでしょう。

参考

・日本経済新聞「注目銘柄2026(3)三菱重、資産効率化で成長」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました