リースバックの税務 ― 譲渡所得と住民税の扱いを整理する

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近年、自宅を売却してそのまま住み続ける「リースバック」という仕組みが注目されています。住宅ローンの整理や老後資金の確保などを目的として利用されるケースが増えており、50代・60代の現役世代でも検討する人が増えています。

もっとも、リースバックは単なる金融商品ではなく、「不動産の売却」と「賃貸契約」が組み合わさった仕組みです。そのため税務上は通常の不動産売却と同じく譲渡所得課税の対象となります。

本稿では、リースバックを利用した場合の税務、特に譲渡所得税と住民税の扱いを整理します。


リースバックは税務上「自宅の売却」として扱われる

リースバックでは、最初に自宅を不動産会社などに売却します。
その後、その住宅を賃貸物件として借りて住み続けることになります。

税務上はこのうち売却の部分が重要です。
自宅を売却した場合には、次の計算により譲渡所得が発生します。

譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)

ここでいう

  • 譲渡価額
    売却価格(リースバックの買い取り価格)
  • 取得費
    自宅の購入価格や建築費など
  • 譲渡費用
    仲介手数料など売却のための費用

となります。

リースバックの場合でも、この計算方法は通常の不動産売却と変わりません。


居住用財産の3000万円特別控除が使える可能性

自宅を売却する場合、多くのケースで利用されるのが居住用財産の3000万円特別控除です。

この制度は、自宅を売却した場合に譲渡所得から最大3000万円を控除できるというものです。

たとえば次のようなケースを考えます。

売却価格
2000万円

取得費
1500万円

譲渡所得
500万円

この場合、3000万円特別控除が適用できれば

課税譲渡所得
0円

となり、所得税・住民税は発生しません。

リースバックでも、売却する住宅が自分の居住用住宅である場合には、この特例が適用できる可能性があります。


所有期間によって税率が異なる

3000万円控除を差し引いた後に課税所得が残る場合、譲渡所得税が課税されます。

税率は所有期間によって次のように区分されます。

長期譲渡所得(所有期間5年超)

所得税
15%

住民税
5%

合計
20%(復興特別所得税を除く)

短期譲渡所得(所有期間5年以下)

所得税
30%

住民税
9%

合計
39%(復興特別所得税を除く)

住宅は長期間保有しているケースが多いため、実務上は長期譲渡所得となるケースが一般的です。


リースバック後の家賃は控除できない

リースバックでは、売却後に家賃を支払うことになります。

しかし、この家賃は税務上の控除対象にはなりません。
住宅ローン控除のような税制優遇も基本的に利用できなくなります。

つまり

  • 売却時には譲渡所得課税
  • その後は通常の賃貸住宅として家賃支払い

という扱いになります。

住宅を所有していた場合と比べると、税務上のメリットは必ずしも大きくない点には注意が必要です。


相続との関係にも注意が必要

リースバックを利用すると、自宅の所有権はすでに売却されています。

そのため将来相続が発生した場合には、

  • 自宅不動産
    ではなく
  • 売却代金として受け取った資金

が相続財産になります。

自宅不動産には評価額が抑えられる場合がありますが、現金はそのままの金額で相続財産となります。
資産構成が変わることにより、相続税の影響が変わる可能性もあります。


結論

リースバックは、自宅に住み続けながら資金を確保できる仕組みとして利用が広がっています。しかし税務上は特別な制度ではなく、基本的には自宅の売却と同じ課税関係になります。

主なポイントは次のとおりです。

  • 売却時には譲渡所得課税が発生する
  • 居住用財産の3000万円特別控除が利用できる可能性がある
  • 所有期間によって税率が異なる
  • 売却後の家賃は税務上控除できない
  • 相続財産の構成にも影響する

リースバックは資金調達の手段として一定のメリットがありますが、税務面を含めて総合的に判断することが重要です。契約前に不動産や税務の専門家に相談し、複数の選択肢を比較したうえで検討することが望ましいといえます。


参考

日本経済新聞「<ステップアップ>リースバック 売却価格に注意 利用者に不利なケースも」2026年3月7日 朝刊
国税庁 譲渡所得の計算に関する解説資料
国税庁 居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除制度解説

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